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 厚いベールに包まれた北朝鮮の内情は脱北者の証言等によって以前よりは情報量は増えてはいるが、それでもなお深い霧がかかった対岸を眺めるような感がある。とくに虚実入り乱れた情報が飛び交う政権上層部の正確な実態は把握しがたい。

 その北朝鮮と隣国中国の関係も、これまたわかりにくいものがある。

 私は2000年5月末、金正日委員長が久々に訪中した際、これを北京で取材した経験がある。1983年以来17年ぶりの訪中で、金日成主席の死後、最高指導者となって最初の外国訪問ということで世界のメディアは注目した。ところが「帰国するまで公表しない」という秘密訪中の形式を中国側も受け入れたため、本当に北京にやって来たのかどうかでさえ確認が容易でなかった。

 特別列車が北京駅に停まってないか探りに行き、宿泊場所と思われる釣魚台迎賓館の車の出入りをチェックしたりした。犬も歩けば棒に当たるで、そのうち面白い情報を耳にした。在北京の北朝鮮大使館の周辺にあった生鮮食品市場がある日突然撤去され、館員がせっせと草取りをする姿が確認された。大使館建物に掲揚される国旗が久々に新品に取り換えられた。こうした断片情報の状況証拠をもとに「現在訪問中の模様だ」という歯切れの悪い原稿を書かされたものである。

 もっとも厄介な客人が帰国した後、中国外務省の幹部も「こうした訪問形式に疑問はあるが、先方がどうしてもというのでしかたない」と漏らしたが。

 さて今回の2000年以降5回目の金委員長の訪中後、北朝鮮国内の動きがあわただしい。6月7日に行われた最高人民会議で事実上の最高権力機関である国防委員会の副委員長に金委員長の実妹の夫の張成沢朝鮮労働党部長が任命された。

 4月に開かれたばかりの最高人民会議が2カ月後に再び開かれるのは異例だし、張氏が5月の金委員長訪中に随行して帰国したばかりというタイミングも注目されるし、さらには確たる軍歴のない張氏が国防委員会の要職に就任するのも異例といえよう。

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筆者

加藤千洋

加藤千洋(かとう・ちひろ) 加藤千洋(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)

同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。1972年、朝日新聞入社。大阪本社社会部を経て北京特派員、アジア総局長、中国総局長などを経て外報部長。編集委員。2004年から2008年まで「報道ステーション」(テレビ朝日系)コメンテーター。一連の中国報道で99年度ボーン上田記念国際記者賞。

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