谷田邦一
2010年07月05日
政権交代であおりを食った安全保障分野の課題は普天間問題にとどまらない。航空自衛隊の次期戦闘機(FX=ファイター・エクスペリメンタル)選定もその一つといえる。米国の国内事情がからまり、長く対象機種が定まらずに混迷してきたが、ようやく方向性が見えてきた。ただしカギを握るのは、対米関係や近隣諸国の航空戦力の行方ではない。今期の選定には思わぬどんでん返しが待ち受けていそうだ。
空自の戦闘機は現在、F15、F2、F4の3タイプ、計約260機。今回は老朽化し更新期を迎えたF4(ファントム)が対象で、後継機として約50機前後が導入される。
FXはいつの時代も巨大プロジェクトだ。戦闘機の価格は1機あたり100億円を超すのが日本の相場とされ、総額で5千億円から1兆円近い巨大商戦になる見込み。
このビッグ・ビジネスを当て込み、欧米の大手航空機メーカーはここ数年、国内外でしのぎを削ってきた。
防衛省・自衛隊が調査対象としたのは欧米の6機種。仏ダッソー社のラファールが早々と抜け落ち、続いて「世界最強」と言われ、当初は本命視されていたステルス機F22(ラプター)が発注打ち切りや輸出禁止などの理由でほぼ脱落した。
現在は3機種の競い合いといえる。その顔ぶれは――。
(1)米英など9カ国が共同開発し米空軍の次期主力機となる米ロッキード・マーチン社のF35(ライトニング2)
(2)米ボーイング社が海軍向けに開発し空母艦載機として実戦配備されているFA18E/F(スーパーホーネット)
(3)英独など4カ国が共同開発し英国の大手BAEシステムズ社が窓口になっているユーロファイター(タイフーン)
飛行特性や搭載兵器など性能諸元には長短があるが、いずれもロシアや中国の手ごわい最新鋭機を仮想敵とみなして開発された名機ばかり。「勝敗を決するのは能力以外の他の要因となる」(防衛省高官)というのが関係者の一致した見方だ。
過去のFX選定では次の3つの要因が考慮されてきた。
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