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菅首相「綸言汗の如し」

高成田享

高成田享 仙台大学体育学部教授(スポーツメディア論)

 綸言汗の如し、とはよく言ったものだ。君主が一度口に出したものは、汗と同じようにもう戻らない。菅直人首相が消費税について、「自民党が提案する10%をひとつの参考にする」と述べたことから、今回の参院選は消費税選挙になった。4年間は論議も封印するとしていた民主党の首相が、党内での論議もしないうちに「10%」という具体的な数字に言及したのだから、消費税に反対する人はもちろん、消費税の引き上げも仕方がないと思っている人も大いにとまどったに違いない。今回の選挙結果は、党首の一言が響いたということになるだろう。

 昨年9月の衆院選による政権交代で国民の多くが期待したのは、予算の無駄遣いをなくす、官僚支配をやめさせる、地方分権を進める、子育てや福祉を充実させる、といった民主党の公約に沿った政策の実現だったろう。ところが、鳩山由起夫前首相は、普天間基地の移転問題で踏み込みすぎて、国民の期待に十分応えることができなかった。鳩山氏に代わって菅氏が首相の座に就いたときに、内閣支持率が急回復したのは、民主党への期待がまだ残っていたからだろう。

 ところが、消費税選挙になったことで、民主党による改革を求めた有権者の一部は「みんなの党」による改革を期待してそちらに流れただろう。消費税を引き上げるにしても、その前に予算の無駄遣いを徹底的に洗い出してほしいという有権者にとって、「その前にやることがあるだろう」という「みんなの党」のスローガンは、心にすとんと入ったのではないか。また、事業仕分けを重ねても予算を大きく削減できないと、改革の限界を悟った有権者の一部は自民党に回帰したのではないか。

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