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バラマキの季節は終わった――農家所得補償は「歪み」を直せるか

菅沼栄一郎

菅沼栄一郎 朝日新聞記者(地域報道部)

 この参院選で消費税引き上げは否定されたのか――有権者のメッセージは読み取りにくい。消費税をめぐる各党間の話し合いの今後の道筋は必ずしもはっきりしないが、バラマキをやめ「ムダ削減」へ向かうことはどうやら間違いなさそうだ。農家がその行方を注目している戸別所得補償制度も、今年度から導入されたばかりなのに、縮小・変更を迫られる可能性がある。補償に頼る兼業農家は戸惑うが、選挙の得票目当てのバラマキがなくなり、長期的な農政を考える冷静な議論ができる環境になる、と歓迎する向きもある。

 例えば、コメ増産を目指して40余年前に生まれた秋田県大潟村は、早くも戸別所得補償「後」をにらんで動き出している。

 八郎潟を埋め立てた約1万ヘクタールの水田が広がる大潟村の農協組合長は先月末、入植第2世代に引き継がれた。70歳の前組合長からバトンを受けた新組合長の小林肇さん(43)は、戸別所得補償について「もともと財源不足で長くは続かない。コメの価格が安くなる将来に備えて生き残るための準備期間だ」と言う。

 大潟村は、戸別所得補償制度の導入を機に、これまで50%未満だった減反農家が、一気に85%に増えた。小林さんも父親の代以来「反減反」だったが、今年から一転して減反に参加した。このため、30ヘクタール余り水田の半分でしか(食用)米を作ることができなくなったが、残りの半分の転作田では米粉やせんべいなどに使う加工用米を作り始めた。戸別所得補償と併行して始められた多額の助成を活用したのだ。この先、補償や助成には財源不足が予想されるが、その前に、安い米価にも耐えられる経営体質を強化する計画だ。

 コメの消費量が減り、「コメ余り」が常態化するなかで、米価はじりじり下がり、歯止めがかからない情勢になりつつある。「日本の食糧をどうするのか。どれだけ自給をして、だれが担うのか。そのためには、消費者がどれだけ税金を使うのか。国民全体で徹底議論をしてほしい」。小林さんの願いだ。

 一方で、今回も減反には参加しなかった黒瀬正さん(66)は、「戸別補償制度は米価の下落を加速する」と指摘する。これまでの日本の農業は政治によって歪められてきた。補助金を一切やめて、市場原理に任せるべきだ、というのが持論だ。バラマキが後退し、将来をにらんだ農政議論ができるようになることを期待する。

 戸別所得補償をめぐる参院選の「民意」は読み取りにくい。 ・・・ログインして読む
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筆者

菅沼栄一郎

菅沼栄一郎(すがぬま・えいいちろう) 朝日新聞記者(地域報道部)

朝日新聞記者 1955年11月27日生まれ。80年、新聞記者に。福島支局、北海道報道部、東北取材センターなど地域を歩く。この間、政治部で自民党などを担当。著書に『村が消えた――平成大合併とは何だったのか』(祥伝社新書)、『地域主権の近未来図』(朝日新書、増田寛也・前岩手県知事と共著)。

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