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 メキシコ湾での油田事故の発生で同湾での新規掘削は一時中断を余儀なくされている。しかし、その一方で、世界各地では新規深海油田開発のための掘削作業が日々進められたり、新規プロジェクトが承認されたりしており、深海油田開発の勢いは止まりそうにない。

 事故を契機に、代替エネルギーへの移行の必要性が声高に叫ばれているが、世界のエネルギー需要は今後も右肩上がりに増えていく一方の見通しであるし、代替エネルギーの開発・導入のスピードを考えても、石油への依存度を大幅に下げるためには少なくとも20年から30年、現実的にはもっと長い期間が必要であると言われている。そのため、人類は今後しばらく石油に依存していかなくてはならないし、陸地での確認埋蔵量に限りがある以上、今後も深海油田開発が必要とされ続けるだろう。

 そうであれば、今回のような事故が再び発生し、甚大な被害が発生することをいかに未然に防ぐか、そのための安全対策がしっかりと講じられるような法規制を整備するためにはどうすれば良いかということが一つのポイントとなる。

 今回の事故発生地である米国では、深海油田開発における安全対策等に対する規制強化を求める国内世論が高まっている。しかしこれに対して石油業界は規制強化を回避しようと必死である。6月15日にBP、コノコフィリップス、エクソンモービル、シェブロン、シェルという石油メジャー5社が出席した下院公聴会では、各社とも米国の規制は既に世界でも最も厳しいレベルであると述べ、BP以外の各社は、今回の事件は世界水準の安全基準に従っていなかったBPに落ち度があり、自分たちはBPとは違う、と口を揃えた。

 このような業界の抵抗は欧州でも見られ、5月に欧州議会で深海油田開発に関する決議が採択されようとしていたが、それがBPのロビーイングによって阻止されたと報じられている。

 また、深海油田開発に熱心な新興国――例えば、ペトロブラスを抱えるブラジルや、中国海洋石油有限公司(CNOOC)を抱える中国-でも、今回の事故を受けて、安全対策強化のために企業が自ら対策を強化したり、このために当局が規制強化につとめたりしようとする動きが見られる。

 このように各国や各企業で深海油田開発にかかる事故防止のための措置を強化しようという機運は高まっているが、果たして個別の国や企業にまかせておくだけで深海油田開発による「危険」への備えは十分に強化されるのだろうか。

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筆者

水田愼一

水田愼一(みずた・しんいち) 水田愼一(三菱総合研究所海外事業研究センターシニア政策アナリスト)

三菱総合研究所海外事業研究センターシニア政策アナリスト。東京都生まれ。ニューヨーク大学大学院修士課程修了(国際関係論)。東京大学大学院博士課程修了(博士(国際貢献))。1996年外務省入省後、北米局、在米日本国大使館、欧州局、アジア大洋州局、大臣官房を経て退官、2002年11月より現職。専門は、外交・安全保障、平和構築、国際協力、通商政策、貿易・投資等の分野。

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