土井香苗
2010年07月21日
今、カブール、東京、ワシントンDCなど各国の政府関係者の間で信奉者が増えている「タリバン修正主義」。過去8年間にわたり、タリバンは「敵」だと説明してきた政府関係者は、今度は、戦闘を放棄させるために一転してタリバンを「支援対象」とするに至った理由を説明するため躍起だ。この「タリバン修正主義」、これからますます勢いを増し、今後何年も政治の場で語られることになろう。
この「タリバン修正主義」の勃興とともに、めっきり聞かなくなってしまったものがある。タリバンの残虐行為の数々だ。斬首処刑、仕掛け爆弾テロによる民間人被害、女子校への脅迫、公的な地位にある女性の暗殺事件など、タリバンが行なった残虐な犯行はきりがないが、ほとんど取り上げられなくなってしまった。かわりに、武装組織の兵士はほとんどが金目的の”$10タリバン”か、地方政府の不正と戦うために立ち上がった現代版ロビンフッドだ、などという新しい図式が、メディアをにぎわしている。
多くの下級兵士が武装勢力に加わる動機に、金や政治があるのは確かだ。しかし、この新しい図式には、タリバンと一緒に社会で生活する人びと-----特に女性の視点が欠落している。
「ナイトレター」の恐怖
「われらタリバンは、政府の仕事を辞めるよう警告する。…さもなくば殺す。殺し方は今までにどんな女も殺されたことがないような残虐極まりないものを選ぶ。お前のように働く女たちのいい見せしめになるだろう」
ファティマがこの脅迫状を受け取ったのは2010年2月のこと。彼女の頭は恐怖でいっぱいになった。そして、泣く泣く、公務員の仕事を辞めた。一方で、脅迫状には動じないと決意した女性もいる。ホサイ(22歳)は、電話で、同じような脅迫を受けた。でも無視することに決めた。米国系の開発企業で働いていた彼女は仕事が大好きだったし、彼女の収入が一家の家計を支えていたからだ。ホサイは、今年4月のある日、オフィスを出たところで正体不明の男たちに撃たれ、負傷。その後命を落とした。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください