小北清人
2010年07月26日
最近、日本の国会議員が北京の北朝鮮大使館を訪れ、北の幹部と面談したとの情報が筆者の耳に入った。その情報によると、幹部の名は工作名「李哲」。本名、「李ホナム」という北の工作機関、統一戦線部の幹部だ。韓国国内の世論工作などを担当しており、6月に行われた韓国の地方自治体選挙で、李明博大統領の与党・ハンナラ党が敗北したことに「大いに貢献した」と北の指導部から高く評価されたといわれる。
この李ホナム氏と日本の国会議員の間で、どんな話が交わされたかは不明だが、会合が事実とすれば、テーマが日朝関係だったことは、まず間違いあるまい。
気になるのは、この議員が小沢一郎・民主党前幹事長と親しいとされること。小沢氏といえば、9月の民主党代表選を前にした、「政局の台風の目」。まさか、この北京会合が、政局と連動した「小沢訪朝」に向けた準備ということもないだろうが……。だが、去年9月の政権交代以来、「小沢訪朝」がメディアに取りざたされてきたのも事実ではある。
北朝鮮に対する日米韓の対応が、表向きはともかく、守りを固めたうえでの「神経戦」に入ったのは確かなようだ。韓国海軍哨戒艦「天安」の爆沈事件(3月26日)が、5月になって、韓米などの合同調査団により「北の犯行」と断定されて以来、北朝鮮と米韓の緊張は高まるばかりだった。だがそれも、7月上旬の国連安保理の議長声明が、事件を非難はするものの、犯人を名指ししない玉虫色の決着となり、しかも北朝鮮への追加制裁もなく終わったことで対決局面はヤマ場を超えた。事態は「対決」から、「6者協議再開」をめぐる神経戦へと変わった。
北朝鮮は「対等な立場での6者協議開催」を口にし、「核問題以上に、米国との平和協定締結を話し合うのが先だ」と暗に言い出している。それが6者協議再開の前提条件だといわんばかりだ。爆沈事件への関与を否定し続ける北は、当然ながら、韓国などが要求する「謝罪」も「責任者の処罰」も無視。しばらくは国内の「新体制」固めのため、時間稼ぎをしたいのだろう。
「とりあえずの安定」を、いま北朝鮮は必要としている。
というのも、いままさに北は権力継承の重大時期にあるからだ。この9月上旬に予定される、朝鮮労働党の党代表者会で、金正日総書記の三男・ジョンウン氏がついに、党の要職に就く可能性が強まっている。健康が悪化した金総書記の代理人として浮上した総書記の義弟・張成沢氏(党行政部長)の昇格も取りざたされる。
権力継承はこのままスムーズに行くのか?
かの国のことゆえ、予断は出来ないが、気になることが一つある。
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