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「女性の社会進出」、日欧30年の差 

脇阪紀行

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

 若い知人のR君(30)はこの夏、Mさん(29)と結婚する。新郎R君は大学を出て機械メーカーに就職したが、社会福祉に関心を持ち、昨年、高齢者介護施設に転職した。しかし給料は減り、生活は楽ではない。新婦のMさんは仕事口を探して、低収入を補うことにした。

 統計上、Mさんは新たな労働力として数えられ、いま約42%の日本の女性雇用率はわずかに上昇する。しかしMさんの再就職を真の「女性の社会進出」と呼べるのだろうか。生活苦にあえぐ共稼ぎ夫婦を生み出す状況はどうしたら改められるのか。

 子育て中の共稼ぎ夫婦だと、女性の負担がやはり大きいのではないか。私が、そんな平凡な事実に気づいたのは、最近、オランダに出張した時だ。

 取材で世話になった女性Bさん(38)が数日間、いつも取材先に自家用車を運転して現れる。取材が終わるとそのまま「バイバイ」。聞くと、2歳と6歳の子供二人の保育園、学校への送り迎えに遅れないためだという。パート労働で週4日、夫は政府の官僚だ。

 それでもオランダは日本よりましだと思ったのは、この国ではパートとフルタイムとの賃金差別が禁じられ、男性が長い育児休暇を取る習慣があるからだ。生活に余裕がある。だから働いても貧乏から抜け出せないワーキングプアという存在がオランダ人には理解できない。

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