藤原秀人
2010年08月04日
中国で勤務した経験から、北京に着任したばかりの丹羽宇一郎・駐中国大使の前途にしぼって論じたい。
日本が1972年に中華人民共和国と外交関係を結んでから、中国大使は外務官僚がずっと務めてきた。丹羽大使の前の大使が三代続けて中国語研修組のキャリアだったように、対中外交の基礎はいわゆる「チャイナスクール」によって担われてきたといってもいいだろう。
しかし、中国が経済だけでなく軍事でも台頭するとともに、正常化直後のような「親中ムード」は影を潜め、「嫌中派」も増えてきた。その流れのなかで、チャイナスクールに対して「中国べったり」「情報を独占」などの批判が強まってきた。
民主党政権が伊藤忠商事社長を務めた丹羽氏を大使に起用したのは、「政治主導」を示すのが最大の狙いだが、反チャイナスクールの気分も多分に影響したのだろう。
しかし、チャイナスクールの功績は否定できない。
中華人民共和国は中国共産党がつくった国家であり、国政のすべての面で党の指導が行き届いている。トップの胡錦濤総書記(国家主席)をはじめ、指導者、幹部は党官僚として育てられ、昇進してきた。
だから、日本のチャイナスクールの人たちは長い間時間をかけて人脈づくりに励むことができた。そして、中国要人で外国語の堪能な例はいまでもまれで、中国語を使える大使の存在は大きかった。
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