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 実は日本政府はこれまでも、民間出身の大使を何人も任命している。しかし、任地は中小国に限られていた。中国に着任した丹羽宇一郎氏が社長、会長を務めた伊藤忠商事からは近年、バーレーン(近藤剛氏)・ブルガリア(竹田恒治氏)両大使が出ている。

 だが、中国のような大国への民間出身大使は戦後初めて。大物財界人であっても外交経験のない丹羽氏のような人物を、周到な外交を要する国に派遣する是非について、十分な論議が行われた兆候はない。

 米国の場合、大統領が一定の政治的目的で大使を指名する。(1)大統領選挙の論功行賞の場合もあるし、(2)政治的配慮に基づく人事もあれば、(3)専門知識を評価した起用もある。

 過去の駐日大使は、(1)ではルース現大使、(2)は故マンスフィールド元大使(元上院院内総務)やモンデール元大使(元副大統領)ら、(3)には故ライシャワー大使(ハーバード大学教授)がいて、それぞれ特色を生かした仕事ぶりが目立った。ブッシュ前大統領が派遣したベーカー元大使(元上院院内総務)はお歳のせいか動きが鈍く、評判が悪かった。

 政治任命には当たり外れがあり、失言や不行跡のリスクも計算に入れる必要がある。

 丹羽新大使が7月26日、日本記者クラブで行った記者会見の録画をYouTubeで見たが、図らずも危うさを露呈した感がある。

 質疑応答で挑発に乗ったのがまずかった。

 「中国政府が伊藤忠の商権を利用して日本の対中外交に揺さぶりをかけてきたらどうするか」。ベテラン記者が平然と尋ねた。

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筆者

春名幹男

春名幹男(はるな・みきお) 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

1946年京都市生まれ。大阪外国語大学卒。共同通信社ニューヨーク支局、ワシントン支局、ワシントン支局長。名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授をへて、現在、早稲田大学客員教授。ボーン・上田記念国際記者賞・日本記者クラブ賞受賞。著書に『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『秘密のファイル―CIAの対日工作』(共同通信社)など。

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