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冷戦思考から抜け出せぬ自衛隊に大ナタを

谷田邦一

谷田邦一 ジャーナリスト、シンクタンク研究員

 冷戦が終わり主要国間の戦争が遠のいた現代に、こんなモンスター戦車が本当に大量に必要なのか。陸上自衛隊が今年6月、富士山のすそ野の駐屯地で公開した次世代戦車「10(ひと・まる)式」は、そんな疑問を抱かせるほど、度肝を抜く高性能ぶりを見せつけた――。

 日本の戦車の総数は、「90式」と「74式」の計約880両(09年度末現在)。旧ソ連の侵攻を想定していた90年代には約1200両もあった。しかし6年前に見直された安全保障の基本方針「防衛計画の大綱」では、整備目標が600両にまで削減。その達成のために、老朽化した74式を毎年約40両のペースで退役させている。

 日本の保有数の多さは、欧州の島国である英国の386両、イタリアの320両、フランスの637両(ミリタリーバランス2010から)などと比べても際だっている。

 しかも10式は世界最高水準の作戦能力を備えている。

 重さ44トン、長さ10メートル近い巨体を一気に時速70キロまで引き上げるエンジンは、小型自動車約10台分に相当する1200馬力。ネットワーク化された画面で戦術情報をリアルタイムで入手でき、暗視装置や赤外線感知装置などの各種センサーが、闇夜や悪天候でもたちどころに敵を見つけ出すというハイテクぶりである。

 駐屯地で披露された90式との比較走行では、蛇行でも直進でもあっという間に大差をつけるほどだった=写真は、比較走行で90式(左側)と大差を付けた10式戦車。米陸軍の主力戦車「M1A1」と比べても「引けをとらない互角の能力」と、かつて陸自幹部がそろって豪語していた90式をである。

拡大

 新型戦車の開発コンセプトの重点は、新たな脅威と呼ばれる都市部での対テロ戦に備え小型軽量化をはかることにあった。イラクやアフガニスタンで、強力な小型火器に装甲の厚い戦車がうまく対抗してきた実情を踏まえてのことだ。

 重量が50トンもあり国内の橋梁の5割以下しか安全に渡れない90式から、6トンも軽くなり全国の8割の橋を渡れることになった。

 その一方で、乗員の安全性に不安がささやかれている。各国の戦車の重量が、対戦車火器の威力の大型化に伴い増える傾向にあるのに、日本の戦車だけが逆に軽量になったからだ。なぜ対戦車火器から十分に防護できるのか理由が何一つ説明されていない。

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筆者

谷田邦一

谷田邦一(たにだ・くにいち) ジャーナリスト、シンクタンク研究員

1959年生まれ。90年、朝日新聞社入社。社会部、那覇支局、論説委員、編集委員、長崎総局長などを経て、2021年5月に退社。現在は未来工学研究所(東京)のシニア研究員(非常勤)。主要国の防衛政策から基地問題、軍用技術まで幅広く外交・防衛問題全般に関心がある。防衛大学校と防衛研究所で習得した専門知識を生かし、安全保障問題の新しいアプローチ方法を模索中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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