曽我豪
2010年08月17日
小沢一郎氏は大惨敗の参院選のほぼ1週間後、静養先の八丈島から1日だけ東京に舞い戻り、会ったのは新党大地の鈴木宗男代表だった。話題は1999年の自自連立劇、つまり当時、自由党の党首として連立に参画した小沢氏が、小渕内閣の官房副長官だった鈴木氏に対して、いわば当時の受け入れる政権側の対応経緯をあらためて丹念に聞き取ったのだという。
あるいは海江田万里衆院議員はこの8月3日、自身の勉強会に作家・辻井喬氏を呼んで話を聞いた。辻井氏といえば近著は『茜色の空』、故大平正芳元首相を主人公にした作品を世に問うたばかりだ。このご時世、かつて与野党伯仲時代に部分(パーシャル)連合の提唱者だった大平氏の故事が、民主党代表選出馬を取りざたされる海江田氏の脳裏になかったはずがない。
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政治家は演繹でなくて帰納法の動物である。故(ふる)きを温(たず)ねて、知るかどうかは別にして、新しきに立ち向かう。逆に言えば、権力闘争に至らんとする政治家がどこを温ねようとしているかをみれば、どの新しき政局に目を向けているかがみえてくる。
小沢氏にせよ海江田氏にせよ、ポスト菅の政治体制を模索しているとおぼしき面々が、自自連立と言い部分連合と言っても結局は、野党との接点を探る過去の成功体験と知見を温ねたこと自体、もはやひとつの政治意思を感じ取ってもいいだろう。
つまり自分たちであれば今の自公の野党勢力と接点を見いだせるという旗だ。言い換えれば、菅体制のままでは、仮に9月14日の民主党代表選で再選されても、自公の野党勢力を協議の場に引き出す展望はもてないのだという批判の旗である。
他方、菅政権を仕切る仙谷由人官房長官は別の故きを温ねる。結局、国民の民主党に対する視線は小沢か反小沢か。過去20年余、何度も繰り返された党内抗争に決着を付けることが第一だ、と。7月末の民主党の参院選総括、引責辞任を考えた枝野幸男幹事長を励まし、続投で菅直人首相を叱咤したのは、反小沢の旗で正面突破を図る意思の発露だったのだろう。
巡り巡って不思議な時の氏神の地点に立ったのは、鳩山由紀夫前首相である。
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