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消えた尖閣問題のスクープ 米国の政策変更でテストを試みた中国

春名幹男

春名幹男 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

 尖閣諸島の領有権をめぐる最近の中国の攻勢は、オバマ米政権の「政策変更」が誘発した疑いがある。

 実はこの問題で共同通信は8月16日、スクープ記事を送信した。残念なことに分かりにくい記事で、ほとんど注目されなかった。

 少し長くなるが、内容を紹介したい。ワシントン発で、オバマ米政権が尖閣諸島に関する政策を変更し、日本政府にも伝達していた、という内容の記事だ。

 では、どんな風に変わったのか。

 ブッシュ前政権は(1)尖閣諸島は1972年の沖縄施政権返還以来、日本の施政権下にある(2)日米安保条約第5条は日本の施政権下にある領域に条約が適用されると明記している(3)従って、安保条約は尖閣諸島に適用される―という政策をとっていた。2004年3月、当時のエアリー国務省副報道官が言明した。

 ところが、オバマ政権は(3)を明言しない、という新しい政策をとっている、というのだ。

 この報道がワシントンの日本人記者らに伝わり、8月16日(日本時間17日未明)の国務省定例ブリーフィングで質問が出た。

 「米政府は尖閣諸島政策を変えたのか」と聞かれて、クローリー報道官は「変わっていない」と答えた。

 しかし、しつこい記者団の質問に対して、彼は最後に馬脚を現した。直訳で報道官の回答を記すと、次のようになる。

 「尖閣諸島は日本政府の施政権下にある。(安保条約)第5条は日本の施政権下にある領域に条約が適用されると明記している。このため、今日あなたが、条約は尖閣諸島に適用されるのかと聞くなら、回答はイエスだ」

 この報道官発言を上記のブッシュ政権の政策と比べると、(1)、(2)はそのまま継承している。しかし(3)については、自ら明言せず、質問があれば「イエス」と答える、という風に変わったのだ。日本メディアはこれを報道しなかったが、事件は3週間後に起きた。

 報道官の説明も分かりにくい。だがいずれにしてもオバマ政権は自ら「安保条約第5条は尖閣諸島に適用される」とは言わないのだ。 ・・・ログインして読む
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筆者

春名幹男

春名幹男(はるな・みきお) 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

1946年京都市生まれ。大阪外国語大学卒。共同通信社ニューヨーク支局、ワシントン支局、ワシントン支局長。名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授をへて、現在、早稲田大学客員教授。ボーン・上田記念国際記者賞・日本記者クラブ賞受賞。著書に『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『秘密のファイル―CIAの対日工作』(共同通信社)など。

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