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対中国、オールジャパンでいこう

藤原秀人

藤原秀人 朝日新聞記者(国際報道部)

 沖縄県尖閣諸島沖の衝突事件で逮捕された中国人船長が釈放されても、中国政府は逮捕など日本の措置は「不法で無効」と断じ、謝罪と賠償を求めるなど、強硬な姿勢を続けている。日本政府はもちろん謝罪などについて「まったく応じるつもりはない」(菅直人首相)という構えだが、事態打開の決め手を持っているわけではない。

 また、船長の逮捕、勾留、釈放という一連の流れに対して「歴史に残る大失態」(石原伸晃・自民党幹事長)といった批判が野党から噴出している。菅政権は10月1日召集の臨時国会で与野党協調路線の定着をめざしたが、「尖閣国会」という対立局面に陥りかねなくなった。

 しかし、船長釈放、という決定的な判断が下された後に、菅政権の判断をめぐって与野党が激しく争うことにどんな国益があるのだろう。

 日本政府の喫緊の課題は景気対策である。まず大切なのは、臨時国会に提出される補正予算案をめぐり与野党が真摯に議論を重ね、成長戦略や雇用再生につながる内容にすることだ。

 むろん、今回の衝突事件を検証することは必要だ。発生からこれまでに、判断ミスや問題はなかったかどうかを振り返ることは、今後の外交の参考となる。気を付けないといけないのは、政争の具にしないことだ。臨時国会はあくまでも景気対策が第一である。長い目で見ても、経済が再生しないと、外交も力強さや余裕が出ないのだ。

 その外交は与野党で足並みがそろわないときは、力が十分に発揮できない。政権が交代したらコロコロ変わるような外交は、世界になかなか通用しない。ましてや、一枚岩であるように見せるのが巧みな中国には、なおさら「オールジャパン」という姿勢が欠かせないのだ。

 今回の事件処理をめぐり、民主党政権内には中国要路には有効なパイプがないことが明らかになった。民主党内には小沢一郎・元幹事長ら中国との長い付き合いを誇る議員は少なくないが、代表選をめぐるしこりからか、積極的に動いた形跡はない。一方の自民党は与党時代に様々なパイプがあった。小泉首相の靖国参拝で対中関係がぎくしゃくしたときでも機能し、「政冷」だが「経熱」という関係を保つのに役立った。

 「オールジャパン」をめざすのなら、この際、与野党の壁なんか関係ない。与野党党首の合意のもと、中国側にあらゆる機会をとらえて働きかけてもらいたい。

 問題は、中国の今後の出方である。 ・・・ログインして読む
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筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) 朝日新聞記者(国際報道部)

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長を経て、2014年9月より国際報道部。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

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