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「金王朝」は中国の傘の下にとどまるか

藤原秀人

藤原秀人 フリージャーナリスト

 「キム・ジョンウンが大将に任命される」

 中国国営新華社通信は9月28日午前2時23分(日本時間同3時23分)、北朝鮮の朝鮮中央通信の報道を引用して、英文の速報を流した。その後の取り換え原稿では、中国語配信にはない「金正日総書記の息子」という表現も盛り込まれた。

 北朝鮮の報道では「キム・ジョンウン」が金総書記の息子であるとはまったく触れられていない。今のところ、経歴も発表されていないから、新華社の報道はその点で特異である。また、中国語配信では「金正銀」と表記されている。朝日新聞などは漢字表記が不明として「金ジョンウン」と報じているが、新華社が何を根拠にして伝えたのか。もっとも中国語では、漢字で報じるしかないのだが。(※編集部注:10月1日、金ジョンウンの表記は「金正恩」との公式報道がありました)

 前置きが長くなったが、中国にとって北朝鮮とはどういう存在なのかを論じつつ、今回の北朝鮮人事を読み解きたい。

 中国の普通の人々にとっての北朝鮮とは、中国の文化大革命時代のような閉鎖的なイデオロギー国家というものだろう。1992年に韓国と国交正常化してからは、南北朝鮮の相対化が進み、北朝鮮はかなり特異な国とより見られるようになった。中国人は南北朝鮮に観光旅行に行けるが、北観光は「際物」扱いされている。

 中国メディアのなかで、共産党中央機関紙の人民日報や中国中央テレビなどは本音よりは建前という報道に終始するが、国民が北朝鮮を変わり者と見るようになってからは、政治のわかりにくさや暮らしの悲惨さなどもわりと率直に伝えるメディアが増えている。核実験やミサイル発射には、厳しい批判原稿が掲載されるのは珍しくない。また、平壌に特派員を常駐させている強みを生かした新華社の報道は、海外メディアが頼りにするところでもある。

 それでは、中国の党や政府にとっての北朝鮮とは。

 胡錦濤・党総書記は28日、金正日氏が朝鮮労働党総書記に推挙されたことについて、以下のような祝電を送った。

▽中国共産党中央委員会を代表し、また私個人として、朝鮮労働党が代表者会を成功のうちに開催し、あなたが総書記に推挙され、最高指導機関が選出されたことに心から祝意を表す。

▽長年、金総書記をはじめとする労働党は全朝鮮人民を指導し、自力更生、刻苦奮闘で朝鮮型社会主義建設事業の中で極めて大きな成果を収めた。近年、朝鮮人民は強盛国家を建設するため、経済発展、民生改善などの面で一連の喜ばしい成果を収めている。

▽中朝には深い伝統的友誼、緊密な地縁関係、幅広い共通の利益がある。中朝友好協力関係を固め、発展させることは中国の党と政府の揺るぎない方針である。国際情勢がどのように変化しても、われわれは常に戦略的見地と長期的角度から中朝関係をとらえ、守り、推進する。朝鮮と共に努力し、中朝関係を絶えず新たな段階に進め、両国人民に一層幸福をもたらし、地域の永続的平和と共同の繁栄を実現するため、より一層大きく貢献することを願っている。

▽総書記同志と朝鮮労働党が朝鮮人民を指導して強盛国家を建設する事業で新たな、より大きな成果を収めることを心から願っている。

 金ジョンウン氏を含む一連の人事を評価、支持する、という内容だ。人民日報の一面トップに掲載された中国の公式見解である。

 核やミサイルを使った瀬戸際外交や、いくら勧めても改革開放が実現しない経済など、中国当局にとって北朝鮮は一筋縄では対応できない「問題児」である。「世襲」についても批判は根強い。

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筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) フリージャーナリスト

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長などを経て、2019年8月退社。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

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