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政治主導には、議員や官僚以外の政策人材が必要!

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 日本において、「政治主導」が叫ばれはじめて久しい。そのための、中央省庁の改革、官邸改革、選挙制度などさまざまな改革が行われてきた。

 しかしながら、日本で、政治主導という場合、議員や首相・大臣などの政治家や政治がコントロールする対象の行政・公務員だけが議論や制度設計の俎上に上るだけである。つまり、政策や政治に関わる人材を政策人材と定義すれば、その人材として議員や公務員しか考えられていないことになる。

 しかし、政治家に優れた人材がなる仕組みがあり、どんなに優秀な人材が議員になっても、現実には政治主導を実現することは難しい。それは、国内外では24時間、絶え間なく問題が生じ、またそれと並行しながら、次の来るべき社会を構築するための政治をおこない、政策をつくっていかねばならない。また、行政にいる役人は、それらのことだけを考えていることができるのだ。

 これに対して、政治家・議員には選挙があり、24時間政策を考え、行政をモニターし、マネジメントすることは不可能だ。

 ここでは、政治家・議員と政治的価値観を共有し、彼らと一心同体で、彼らを支援しながら、彼らに代わりながら政策作りや行政のマネジメントをできる議員でない政策人材が必要だ。いわば「政治家のアバター」だ。

 その点で、民主党は興味深い人材活用をしている。

 去る9月21日、前原誠司外相は、政務担当の秘書官に民主党国際局の女性スタッフの内田優香さんを起用した。女性としては、はじめての登用だという。内田さんは、外交・安全保障の専門家で、米国や中東諸国をはじめとする各国の人的ネットワークや海外経験も豊富で、在クウェート大使館で外務省専門調査員の経験もある。英国の中東政策の形成を描いた本の翻訳もしている。実は民主党は、内田さん以外にも、多数の党のスタッフをさまざまな形で、常勤・非常勤ですでに行政に送り込み、経験を積ませている(注1)。政策人材が育つには、やはり行政での政策作り、政策執行の経験が不可欠であるので、この方向性は正しい。

 また、先の通常国会では結局成立できなかった政治主導確立法案でも、官房長官や国家戦略局長らを補佐する「内閣政務参事」「内閣政務調査官」と、各省庁の政務三役(大臣、副大臣、政務官)を補佐する「政務調査官」を新設することを予定し、それらの党のスタッフなどを充てることを予定していたようだ。

 この法案については、野党から給与の二重取りとか党スタックの給与を税に支払わせているなどの批判もでている。その点の問題はクリアーしなければならないが、政治主導のための政策人材を育てるという意味では、民主党のやり方は間違いではない。

 しかし、民主党の党本部のスタッフは元々100名を超える程度であり、決して大部隊はない。政策調査会を廃止するとか元に戻すかとか議論や方向性があるなか、多くのスタッフが行政に入っているということは、党と内閣の政策の一元化が基本であるにしろ、党本部で、議員が政策情報を集め、整理し、さらに法案を考えていく政策に関わるサポート体制が手薄になるということでもある。

 このようなことを考えていくと、民主党か他の政党であるかに関わらず、政権をとった党が政治主導を実現していくには、党のスタッフだけではなく、民間などからも、行政に入って、政策に関わる経験を積める仕組みが必要だ。その経験を積んだ者が、人材として成長し、政策人材のプールを形成する。

 また、現在行政にいる人材が、行政を辞めても、政策やパブリックに関わる活動に関わり、行政の時の経験を社会的に活かし続けられる仕組み作りが必要だ。その仕組みがあれば、政権が交代した時、彼らの一部が政策人材として、政権に関わることができるのだ。

 このように、全体としての政策人材が育ち、活躍でき、プールされている場が必要なのだ。政権が交代したときをはじめとして政策や政治が大きく動き、大きく変わる時、その人材が、政策や政治の現場で新たに活躍し、これまでの人材はそこに戻り、次の機会を待つことになる。そのような場があってこそ、政策(研究)市場、政治・政策人材市場(注2)が形成され、政策や政治に関わる人材が社会的に活用されるようになるといえる。

 その市場には、民間非営利で独立の形で、政策代替案や政策情報を作りだすシンクタンクをはじめとする、政策や公の活動に関わるNPOやNGOが多々存在し、政策や政治に関わり組織や民間企業、大学、メディア、行政機関、立法機関やそれらに関わる人材等々が存在する。

 民主党を含め、これからの政党や政治に関わる組織やリーダーは、このような市場の構築も視野に入れて、政治主導を実現していただきたい。そのような日本流の市場が生まれた時に、日本が本格的な民主主義に国になれたといえることになる。 ・・・ログインして読む
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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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