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「星の王子さま」なんてどこにもいない。

小北清人

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 こうなることは、半ば、最初から予想されていたのではないか。

 米中間選挙を前にしての、オバマ米大統領の「不人気」のことである。米世論調査会社が21日に発表したところによると、彼が2012年の大統領選で再選されるべきだと考える国民は39%、再選されるべきではないと答えた割合は59%と過半数を超えたという。

 急速に色あせたオバマ人気。だがそれは、08年の大統領選大勝と、翌09年1月のあの熱狂的すぎる就任式の時点で、「この熱狂はとても長続きしまい」と見越せるものでもあったのだ。

 なぜか。オバマも人間だから。

 それなのに、まるで天井から降り立ったメシアのような期待を彼は背負うことになった。「イエス・ウィ・キャン」はまさに彼にぴったりのスローガンに思えた。実際は、リーマン・ショックに端を発した経済危機とブッシュ前大統領の悪評、共和党対立候補との魅力度の違いなどに助けられた当選だったはずだが。

 しょせんただの人間が、いくらメシアのようにマスコミから崇められても、メシアになれるはずもない。少し前までほとんどの人が現実となるとは思わなかったであろう初のアフリカ系大統領となった彼は、当選した時点で「歴史的存在」となった。だが当選後は「政治の日常」に戻らなければならない。しかも雇用拡大は最も国民にとってリアルな政治課題だ。誰が大統領でも容易でない。「歴史的存在」である彼と現実政治家の彼とのギャップ。雇用問題を解決できない「現実の彼」に多くの米国民が失望するのも当然だ。

 90年代のクリントン大統領が、乱脈な女性関係や不正投資疑惑などスキャンダルまみれになっても、高い支持率を維持できたのは、財政赤字をなくし、IT産業の育成などで経済を浮揚させたことが大きい。

 だが、米国経済が危機的状況に陥ったからこそ当選できたオバマは、いまだ経済を救えずにいる。熱狂からさめた国民はそんなオバマ氏に背を向ける。熱狂は移ろいやすいのだ。そしてかねてのオバマ嫌いは「それみたことか」と非難のオクターブを上げる。

 ケネディ元大統領が大統領在任中でさえも乱脈な女性関係を繰り広げ、執務に支障を来すほど重度のアジソン病だった事はいまやよく知られている。同時代のヒーロー、公民権運動を導いたキング牧師は行く先々で乱れたパーティーを開いていた。これもFBIの盗聴記録で明らかになっている。だが2人はいまも「時代の英雄」として伝説化している。それは、

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