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「事業仕分け」も大きく変わらなければならない!

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 昨年、民主党(中心)政権ができた。新政権発足いくつかの新しい手法が打ち出され、政権交代の意味が大きく印象付けられた。その象徴が、まさに今週27日からその第三弾が始まる「事業仕分け」だ。

 その民主党政権が現在失速気味で、今後菅政権がどのようになり、世論の支持がどうなるかは全く判然としない状態になってきたが、政権交代は、日本の政治を次の段階に進めていくためのプロセスとして必然だったと捉えたい。

 また、その中でも「事業仕分け」は、政権が代わり、従来の政策形成や予算編成を変えていく上での一つのやり方としては、ありなのだと評価したい。その意味では、政権交代した時や数年に1回定期的に、政策や事業を棚卸しする際に、「事業仕分け」をすることは、大いに意味があるのではと思う。

 また、私も、ある議員のサポートで以前に事業仕分けのための情報の整理や予算の分析をしたことがあるが、その情報を読みこなすのがなかなか難しいが、大変に勉強になった。その意味からすると、行政や立法の経験のない新人あるいは経験の浅い議員が、政策や予算について学ぶ機会としては、大いに意味があると思う。

 また、私は、昨年の行政刷新会議の「事業仕分け」第一弾の現場にも立ち寄らせてもらい、その現場の参加者やオブザーバーの熱気と国民からの期待感には大いに心を動かされたものだ。そして現場で配布された資料(来た人には全員配布されていた)は、かなり整理されたもので、あのような情報が公開されていること自体よいことであると感じたものである。

 このように第一弾は、はじめてということもあり、評価できるものだったといえよう。国民も評価し、民主党の支持にもつながった。

 しかし、それ以降、「事業仕分け」はどれだけ、進化し発展してきたか。今回の第三弾も、ムダ使いの温床といわれその成果に期待が大きい特別会計が対象でこれまでと異なるし、以前と比べてそれなりに工夫があるのだと思う(もしあったとして、そのキチンとした説明や報告があったかな。民意を引きつけていくにはそれも必要だと思うのだが)が、従来の延長戦上で実施されるような感じだ。

 事業や政策は、ムダは省くためには個別にみていくことは大切だ。しかし、予算全体や政策全体の方向性や他の予算・政策と「事業仕分け」の対象の個々の事業・予算の関係性や相互補完性はさらに重要だ。特に日本の行政組織のように各省庁が独立し、縦割り構造が強い場合はその目配りが必要だ。

 民主党政権は、「事業仕分け」は、単に当該事業費を減らすことが目的ではない、予算の組み換えが目的だといってきたと思う。もしそうなら、必ずしも専門家でもない民間人を入れた、現地調査などをするとはいえ非常に限定された時間内に行う現在のようなやり方でいいのだろうか。

 私は、公益法人に在籍していた時に、事業評価に関わったことがある。その関係もあり、一事業を評価するのであっても、かなりの時間と労力を要するという認識がある。また事業・政策を的確に評価するには、事業や政策をつくるときに的確な評価基準や評価手法を決めておいて評価しないと実は評価できない、という当然のことも学んだ。現在対象とされている政策や事業がつくられたときには、それらの前提がつくられていたのだろうか。そうでないと、事業執行者からすると「後だしジャンケン」的な感じになるのではないか(もちろんそれをこれまで適正にしてこなかった事業執行者や立法者の責任も大きいが)。事業評価は本来、進行している事業の成果をよりよいものにするためにあるものだと思う。この点でも、改善が必要だ。

 以上のことも踏まえて、菅民主党政権で、「事業仕分け」について今後考えてほしいことがある。特に次の3点が重要だと考えている。

 (1)民意と専門性のバランスをどのようにとるか。

 政策や事業を考える際には、政策や事業を考えるには専門的知見も重要だ。民意も重要だが、専門性をそれとどのように組み合わせて、よりよい事業仕分け、事業評価をしていくか考えてほしい。現在の「事業仕分け」に参加する有識者は、ある分野の専門家であっても、各事業の専門家とは必ずしもいえないのではないか。このことは、政策づくりに、専門性をどう活かすかの問題でもある。

 (2)イベントからメカニズムにどのように変えていくか。

 現在のところ、「事業仕分け」はいまだイベント、パフォーマンスの域を大きく超えていない。予算や政策全体とこの「事業仕分け」、予算編成プロセスとの関連づけのメカニズムを、国民に分かる形で構築してほしい。菅総理が以前提案されていた日本版GAO(米国の組織で会計検査院とか行政監視院と呼ばれる)を国会内に新たにつくり、そこで組織的に事業評価や政策評価をできるようにすることも一つの可能性かもしれない。ただし、日本の会計検査院は、憲法上の独立機関なので、これを日本版GAOに衣替えするには、憲法改正が必要になる。

 さらに先に述べたように、事業や政策のつくり方における評価基準のビルトインなども、このメカニズムを構築する際には組む込まれるべきであろう。これは、現在のような政策や事業の立て方を変えることでもある。

 (3)政治家(議員)とスタッフの仕事の分担をどう考えるか。 ・・・ログインして読む
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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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