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嫌でも中国とは離縁できない

藤原秀人

藤原秀人 フリージャーナリスト

 尖閣諸島沖の衝突事件をめぐる中国の強硬な態度にうんざりしている日本人が多いだろう。それだけでなく、レアアースの輸出規制やノーベル平和賞への強い反発などで、中国は世界の多くの人々を敵に回した感がある。3月に起きた韓国の哨戒艦沈没事件で北朝鮮を責めなかった中国と韓国の関係はぎくしゃくしていたが、「そのあおりで、民間交流のビザがいまだに出ない」とこのほど来日した韓国の大学教授はこぼしていた。

「責任ある大国」とはとてもいえない中国の昨今の振る舞いだ、との批判があちこちで噴き出している。だが、中国はそういう世界の視線をいっさい気にかけていないのでは、という見方も出ている。

「韜光養晦」(とうこうようかい)。才能を覆い隠し目立たない、という意味である。中国の改革開放をリードしたトウ小平氏が外交方針で使った言葉として有名で、中国の一連の強腰外交はこれに反しているという論調が今あちこちで見られる。

 確かにトウ氏は「発展すればするほど謙虚であるべきで、無思慮に他人を批判してはならず、他人を叱責すべきではない。分を越えたことは言わず、分を越えたことはなしてはならない」とも述べている。

しかし、このような謙虚な発言は、中国が1989年の天安門事件で外交的な打撃を受けた直後のものであることを忘れてはならない。

 さらに同じころ、トウ氏は「中国の内政には、いかなる者の干渉も決して許すことができないし、どのような結果になろうとも、中国は一切譲歩できない。中国の内政は自ら管理しなければならないし、いかなる災難が来ようとも中国はそれに耐えることができ、絶対譲歩することはない」とも話している。

 自らの領土とする尖閣諸島の問題や民主活動家へのノーベル賞授賞などでの中国の強い態度は、トウ氏の発言からすれば何ら不思議でないのである。

「韜光養晦」の後に続く言葉にも注目すべきである。「有所作為」。必要な時は行動する、と訳せばいいだろう。その通り、中国は天安門事件での西側の制裁に耐えて経済成長を続け、経済面だけでなく軍事面でも米国に迫ろうという勢いである。強大になった国力を背景に、中国は行動しているとも言えるのだ。

 だが、強気一辺倒に見られるなかで、中国は微妙に軌道を修正している。

 知り合いの中国人研究者によれば、中国当局はこの間の外交のプラスマイナスを検討する会議を頻繁に開いているという。国際社会での評判の悪さにはさすがに困惑しているとのことで、イメージ回復に乗り出しているようだ。

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筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) フリージャーナリスト

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長などを経て、2019年8月退社。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長を経て、2014年9月より国際報道部。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

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