菅沼栄一郎
2010年11月04日
地方自治は辛気くさい。まちづくりをどうするか。コツコツと住民との対話を積み重ねて方針を決める。民主主義もこれに似ている。大型の改革構想が出ても、反対意見が出て、つぶれることが少なくない。合意の手続きは、まどろっこしい。そんな地味な舞台に、人気者の指導者が登場。大仕掛けでダイナミックな絵柄を見せると、住民は拍手喝采する。
橋下徹・大阪府知事が訴える「大阪都構想」の風景はそんなふうに見える。
大阪府と市、堺市を解体して「大阪都」の下に置き、東京都23区のような特別区に再編成する。「指揮官と財布を一本化」し、強力なリーダーシップで大阪の空気を吹き飛ばして再生させ、「世界の5本の指に入る都市にする」と橋下知事は宣言する。
大阪都になれば、(1)権限が集中して迅速な決断ができ、投資を集中できるから経済が活性化する(2)大学や図書館など府と市の二重行政が解消されて行革が進み(3)区長が公選制になるから、住民の意向も反映しやすくなる――そう、橋下知事は説明する。
ただ、協議をおろそかにすれば迅速な決定には判断ミスのリスクが伴うし、二重行政の解消は府と市が調整すれば解決する、との反論がある。大阪都と特別区の財源・権限分担をどうするのか?区議会の規模は?住民自治のしくみは?橋下氏はなお説明していない。東京都の場合、市町村が集める固定資産税を特別区では都が集め、財源が集中している。
こうしてみると、大阪再生のために大阪都こそが有効な手段なのか、住民の利益となるのか、よくわからない。橋下氏は知事就任以来、大阪府庁の移転や伊丹空港の廃止を打ち出してきたが、いずれも、府議会や周辺県知事の反対に会い、挫折した。そんな合意形成手続きへのいらだちが、大阪都構想の背景に見える。
「どうして自分がいいと思うことがさっさとできないのか」
片山善博前鳥取県知事(現総務相)は、橋下知事にこんな不満を聞かされたことがある。
片山氏は、こう答える。ちょっと長いが引用しよう。
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください