高成田享
2010年11月05日
普天間基地の移設問題は、八方ふさがりの状態になっている。菅内閣になって日米政府は辺野古への移転で合意したものの、地元の名護市長は建設反対の姿勢を変えていない。今回の沖縄知事選で、どちらの候補が勝っても、この状態に大きな変化はないだろう。
それなら、移転問題は塩漬けかと言えば、そうではない。海兵隊のグアム移転という時計の針は動いているからだ。当初よりも基地建設が遅れるものの、本隊の移転がご破算になったわけではない。いずれ海兵隊の主力部隊がグアムに移ることは確かで、不透明なのは、海兵隊がどの程度の兵力を残留部隊として沖縄に残すか、ということだ。
朝鮮半島や台湾の有事を考えれば、米国が海兵隊の実戦部隊すべてをグアムに下げることはないと思っていた。その情勢に大きな変化はないところへ、日中間で尖閣問題が浮上した。日本側からも即戦力のある部隊の日本残留を望む理由が出てきた。中国が尖閣諸島の占領という実力行動に出た場合、すぐに対応できる能力を持っている部隊のひとつは海兵隊だ。そうなった場合、実際に米軍が出動するかどうかは不透明だが、海兵隊がすべて沖縄から引くことは、中国に「誤ったメッセージ」(中国による尖閣の占領を米国が暗黙に認める)を与える恐れがないとは言い切れない。
狭い選択肢のなかで、民主党政権がなすべきことは、海兵隊のグアム移転を促進させることだ。とはいっても、
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