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対中「過剰配慮」と日本の「ナショナリズム」

櫻田淳

櫻田淳 東洋学園大学教授

 尖閣諸島沖で海保巡視艇と中国漁船が衝突した様子を収録したビデオ映像の一部がネット上に流出した一件は、既に様々な観点から議論の対象になっている。この一件の背景には、中国に対する配慮として、「尖閣ビデオ」の中身を公開しなかった菅直人民主党内閣の政策判断がある。

 尖閣事件以降、置き去りにされてきたのは、どのように日本の「ナショナリズム」の現状や耐性を考えるのかという議論である。中国国内で頻発する「反日デモ」に反映される中国の「ナショナリズム」の様相は、日本には頻繁に伝えられるけれども、中国政府も、そして菅直人内閣下の日本政府も、この日本の「ナショナリズム」に対しては真正面から向き合っていないようである。

 盤石な日中関係とは、中国における対日感情と日本における対中感情の双方が良好であることを求めるものであるけれども、日本における対中感情には現在に至るまで、どのような配慮が加えられたのかは、定かではない。日本における「反中デモ」が当初、実質上、黙殺されていたのは、日本の「ナショナリズム」に対する扱いを示唆している。

 しかも、フランス紙「ル・モンド」(10月1日付)社説中、「粗暴な列強」と呼ばれた中国の現状は、日本以外の国々の警戒を招いている。もし、中国政府が「粗暴な列強」と目される現状を改めないのであれば、日本もまた、他の国々との同じ程度までの警戒の眼差しを中国に向けてもよいはずである。しかしながら、実際には、そうした眼差しを向けるのは、日中関係への配慮から相応しくないと語られる。中国という「粗暴な列強」に対する半ば過剰な配慮は、日本における対中感情からは明らかに乖離したものである故に、却って対中感情の悪化を加速させている。「尖閣ビデオ」流出が多くの日本国民から歓迎されている所以は、中国に対する「過剰配慮」に疑問を感じる向きが強くなっていることにある。

 ところで、AP通信が報じたところでは、来月にオスロで開かれる劉暁波(作家)のノーベル平和賞授賞式典に際して、中国政府は、式典出席を手控えるように各国政府に圧力を掛けている。これに対して、ドイツは既に出席を明言し、中国からの圧力を一蹴する姿勢を明らかにしている。筆者が判断する限りは、このドイツの姿勢に追随する国々は、相当な数に上るであろう。

 民主党内閣下の対中「過剰配慮」の如何は、この案件への対応においても問われることになろう。もし、

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筆者

櫻田淳

櫻田淳(さくらだ・じゅん) 東洋学園大学教授

1965年宮城県生まれ。北海道大法学部卒、東京大大学院法学政治学研究科修士課程修了。衆議院議員政策担当秘書などを経て現職。専門は国際政治学、安全保障。1996年第1回読売論壇新人賞・最優秀賞受賞。2001年第1回正論新風賞受賞。著書に『国家への意志』(中公叢書)、『「常識」としての保守主義』(新潮新書)など。

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