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若手官僚の退官の記事に思うこと

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 11月13日付の朝日新聞に「憂う2官僚 さらば霞が関…シンクタンク設立へ『内からの改革』に限界」という記事が掲載されている。

 近年そして現在の政治や官僚機構の混迷と閉塞感の結果だと思う。記事に書かれた退職官僚である朝比奈一郎さんと遠藤洋路さんは、以前から「新しい霞が関を創る若手の会(プロジェクトK)」を中心に、実名で官僚内部から官僚機構を改革する様々な提言や活動を行ってきた。しかし、内部改革に限界を感じて、「青山社中(http://aoyamashachu.com/)」という組織をつくって、政治を変えていく考えだという。今後の活躍に大いに期待したい。

 昨年には、元財務官僚の高橋洋一さんと元経産官僚の原英史さんが「政策工房」という会社を設立し、政策コンサルティングをはじめとした様々な活動を積極的に行い、政党や議員の政策活動をサポートしている。その結果、「議員による国会での論議が深まり、その活発化に貢献できた」(原さんの言葉)という。

 私は、民間非営利独立型のシンクタンクを創り、日本に政策(研究)市場を構築し、日本をより民主主義的な社会にしたいとして長年活動してきた。東京財団や政党の政策研究機関の設立や運営など様々な試みもしてきた。その経験からすると、政策研究活動やその成果から、日本の政策や政策形成を変えていくには、現在の立法・議員や行政と研究との距離がありすぎるという実感がある。今の日本の政策形成で必要とされるのは、まずは、政局や比較的短期的なコンテクストの中で必要な政策形成やマニュフェストなどの政策づくりに役立つ政策コンサルティング的な活動や政策提言だ。独自の研究に基づくオリジナルな政策提言では必ずしもない。

 それは、日本では、政党や議員などの立法や行政機関に、研究(リサーチ)を活かして、政策づくりをするというカルチャーがこれまでなかったことに起因している。つまり、立法や行政に、リサーチ・リテラシーが必要とされてこなかったからだといえる。

 この観点からすると、

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