鈴木崇弘
2010年11月15日
日本の政策形成は、従来クローズドで、議員・政党や官僚などのインナーのアクターによって行われてきた。そこでは、それらのアクターにとっては、政策形成にかかわる手法や専門用語、ルールや慣習・不文律は、暗黙のうちに了解されていること(暗黙知)であり、そのインナーの外にいる人々にとって皆目わからない、あるいはわかりにくいことである。
ところが、現在のように、社会において、政策や政治に対して不満が高まってくると、そのような政策形成では対応できなくなってくる。
そこにおいてあるべき政策形成は、より多くのアクター(市民なども含む)が参画できるようにならないといけない。そのような政策形成になるには、これまでインナーにいたアクターが、そのインナーサークルから民間にでて、政策や政治の活動にかかわることだ。その点に関しては、「若手官僚の退官記事の記事に思うこと」(WEBRONZA11月13日付)という記事に、そのことが現実に起きてきていることを記した。これにより、民間の中に、政策形成のインナーサークルでの暗黙知を知るアクターが生まれ、彼らの有する暗黙知が、そのサークルの外にも広がり、理解されることになり、可視化、見える化されることになる。つまり「形式知」化されるのだ。
形式知とは、暗黙知が主に文章化や数式化・図表化などがされること、表現や説明できる知識になることを意味する。
実は、政策形成における、このような形式知化は、上述したような官僚が退官し、民間で政策や政治活動をすること以外にもある。
それは、政策形成に実際に関わった人材が、書籍の出版などで、自己の経験を文章化することである。これにより、暗黙知が形式知になり、社会における知識といえる「公智」に変換されるのだ。
これは正確な論証ではないが、私の感触では、小泉政権の時に竹中平蔵氏をはじめとする学者などが政権などに関わってきて以来、そのような出版の数が増えているように感じる。政治家の書籍の出版は、従来どうしても自己の政治的な力を高めたり、政治活動や自己宣伝のために行ってきたが、最近、より現実の政策形成に関わる内容のものが出版されてきているように思う。この傾向は今後ますます増大していくことが予想されるが、日本の政策形成がよりオープンになり、民主的になるという意味で歓迎すべきものと考える。
本稿では、以上のような考えに基づき、政策形成における情報のさまざまな情報の形式知化、公智化に資すると思われる書籍(一部)を、私の独断に基づき提示して、本稿を閉じたい。
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