藤原秀人
2010年11月22日
「欧州各国の選択肢は単純かつ明快だ。中国の司法制度に挑戦する政治ゲームに参加したいのか、中国と友好関係を築きたいのか」。中国の前駐日本大使である崔天凱外務次官が今月5日、北京で一部の外国人記者らにこう語った。「選択肢」とは来月10日にノルウェー・オスロであるノーベル平和賞の授賞式に各国の代表が、出席するか、それとも欠席するか、である。
崔次官はメディアを通じて各国に脅しをかけたといえる。実際のところ、中国政府は外交ルートを使って代表を授賞式にさせないよう求めている。前原誠司外相も9日の衆院予算委員会で、日本政府関係者の出席を見合わせるように中国側から要請があったことを認めている。
中国当局は一方で、平和賞を受けた劉暁波氏はむろんのこと、家族らも軟禁状態にして授賞式への出席を阻んでいる。当局は授賞が決まった時にはほとんど報道させないようにメディアを指導したが、ここにきて劉氏やノーベル平和賞委員会への批判がメディア上に目立ってきた。当然のこと、当局の指導がはたらいているに違いない。
中国は授賞式に備えて内外で対策をとっているといえるが、多くの人には大国とはかけ離れたみっともない行為にしか見えないだろう。
しかし、尖閣諸島沖の衝突事件でもそうだったが、中国共産党とその政府は主権を何より大事にし、それが侵されたと判断したときには、容易には譲らない。近現代に受けた侵略の傷が今も癒えていないだけでなく、強国にあこがれる国民感情を無視できないからだ。
だから、中国は授賞式が過ぎるまではかたくなな態度を崩さず、その後は、国際社会の関心が薄まるのを待つのだろう。そういうやり方がいつまでも通用するとは思わないが。
ただ、中国当局も欧米の世論に圧されているばかりではない。
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