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「ニュースにだまされるな!」中間選挙後のアメリカは?

朝日ニュースター「ニュースにだまされるな!」×WEBRONZA提携

うさぎ さて金子さん、アメリカ中間選挙の結果をご説明いただければと思います。

金子 フリップ(1)「上下両院党派別勢力図」を見ていただきたいのですが、事前の下馬評でもオバマ不利が言われていて、上院も過半数を割ってしまうかもしれないと言われていたのが、いちおうギリギリ53議席ということで半数を何とか保ちました。ところが下院は「歴史的な敗北」と言われてもいいくらいですね。現時点で255議席から188議席まで激減するという(未確定8議席)、完全に過半数を割る状況まで来ました。大統領は民主党で、議会の下院、つまり日本でいえば衆議院が共和党という、完全なねじれ状況になりました。

拡大フリップ(1)上下両院党派別勢力図。

 実はこれに付随して州知事選がおこなわれたのですが=フリップ(2)「州知事選」、こちらでも民主党が圧倒的に負けて、共和党が躍進しました。あとで皆さんに説明していただくのですが、これは議会の選挙区割りなどいろいろな問題に反映してきますし、アメリカは連邦国家なので州レベルの政治にも、すごく大きな影響をもたらすと思います。今日はデウィットさんも来ていますが、グリーン政策(グリーン・ニューディール)などもどうなってしまうのか。

拡大フリップ(2)州知事選。

 選挙区割りで上院のフリップ(3)「上院の選挙結果マップ」を見るともっと分かりやすいのですが、赤いところが共和党で青いところが民主党ですが、真ん中あたりは、わーっと真っ赤です。もともと東西の両端は民主党が強かったのですが、南北戦争を思い起こすような状況です。

拡大フリップ(3)上院の選挙結果マップ。

 もうひとつ、もっとすごいのが知事選のフリップ(4)「知事選の選挙結果マップ」で、こちらもすごい状況になっていて、ほとんど真っ赤っか。この勝った共和党の主張は市場原理主義が非常に強い、という状況です。

拡大フリップ(4)知事選の選挙結果マップ。

 まずは、なぜこういう結果になってしまったのか、あるいはこの結果をどう見るか、ということを分析していきたいと思います。なぜこういう結果になったのか、印象でもけっこうですので、砂田先生から伺いましょう。

砂田 はい。オバマ大統領がやってきたことを一定ていど評価してきた立場からいうと非常に残念な結果になりましたが、これがいちおう「民意」ということだと思います。景気が十分に回復しなかったことに対してアメリカ国民が不満を持って、現政権、つまりオバマ大統領と民主党に「ノー」と言った、というのが一般的な解釈で、これは誰も異存がないと思います。実際に、選挙の出口調査でも60%以上の人が「経済を重視して投票した」と答えているので、これは間違いない。

 ただ、政治を分析する立場から見ると、これは経済・景気の状態が実際、客観的にどうなっているかというよりも、有権者の受け取り方、意識の問題なんですね。実際には大不況の元凶は前政権のブッシュの頃にあったわけですが、オバマが打った経済対策に効果がないじゃないか、という共和党の宣伝に国民の多くが同調してしまった、ということです。

 こうした経済のあり方が基本なのですが、私が二つほど付け加えるとすれば、一つは医療保険改革の影響です。これはアメリカ社会にとって非常に必要な改革でしたし、識者は歴史的な改革だったと評価しています。しかし、改革の当初から人気がなかったにもかかわらず、オバマはあえて使命感をもってやったわけです。これで無党派中間層が、必ずしも全面的に医療保険に反対していたとは言えないと思いますが、不況下で医療保険改革に意欲を示すオバマに反発した、ということがあると思います。

 また、この層の人たちは、民主党・共和党の党派対立が激しい「ワシントン政治」を改革してもらう、という意味で「チェンジ」に期待していました。オバマも大統領選では実際にそうしたことを言っていたのに、それはまったく実現しなかった。共和党が頑強に抵抗したので、そうした超党派政治が出来なかったわけですが、それでがっかりして、なおかつ医療保険改革も無理に進めるべきじゃないとなって、無党派中間層の極端な人はティーパーティー(茶会)、そして全体としては共和党に票が流れた、ということだと思います。

 オバマのチェンジに期待していたもう一つの層は民主党支持層なのですが、この人たちはワシントン政治を変えるというよりも、むしろアメリカ社会を改革するような政策の実現を期待していました。その点では、オバマは医療保険改革など一定ていど彼らの期待に応えたのですが、実際には共和党の抵抗に遭って改革が不十分だったということで、民主党支持層もオバマにそれなりの不満を持っているわけです。ただ、不満があるからといってオバマや民主党を支持していないわけではなくて、今でも民主党支持層は80%ぐらいがオバマを支持していますが、熱意がダウンしてしまった。そのため、若い人を中心にあまり積極的に投票に行かなかったわけです。その結果、投票率が40%に下がり、そのうちの過半数が共和党を支持した。これが「民意」になったわけで、国民全体からみれば25%ぐらいの人がオバマに抗議の投票をした、それで結果が決まった、ということだと思います。

金子 西崎さんはどうでしょうか。

西崎 いま、砂田先生がおっしゃったことにまったく同感で、そういう力学が働いたんだと思います。

 ただ同時に、2008年の大統領選があった年の選挙と、今年の大きな差がとても気になります。

 もちろん、オバマには中間選挙で非常に不利になる構造的な要因がありました。一つは、過度の期待が寄せられていて、まるでメシア(救世主)が現れたかのように国内外で期待されてしまったので、失望は当然で仕方がなかったという面があります。

 それから、やはり状況が悪すぎた。経済も戦争、外交、軍事も彼が引き継いだ状況があまりにも悪すぎて、オバマ政権に出来ることは悪化を最低限にとどめることだったと思います。ただ、それは国民から見れば「何が最低限か」判断できないですし、自分の職が生まれることが望んでいる結果なのにそれが生まれなかったことに不満を抱いている。

 もう一つは、そもそもオバマに対する支持が圧倒的ではなくて、やはりアメリカは「フィフティ・フィフティ・ネーション(50%・50%国家)」で、保守・リベラルの両極に分断されています。そのような状況で、オバマは共和党に妥協しながら医療保険改革を進めたわけですが、それがリベラルの失望を生み出しました。

 というように構造的要因はあったのですが、選挙後の2~3日でゆっくり考えてみると、アメリカという国家・社会の目指すビジョンがオバマの選挙の時は、非常に包括的で包容力のある、貧しい人も利益を得ることができるような寛容な社会のビジョンだったのが、景気の不況が続く中でそのようなビジョンを抱く余裕を失っていったのだろうと思います。利益が得られない状態で他の人のことなんか構っていられるか、という怒りとか欲求不満が、大きな意味では現れているんじゃないか、という気がします。

金子 柴田さんは経済的な面について、どう思われますか?

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