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韓国開催のフォーラムで東アジアの新しい可能性を感じた

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 先日、韓国ソウルで開催された「アジア未来フォーラム2010:東アジア企業の進展(Asia Future Forum 2010: Evolution of East Asian Enterprise)」(主催:進歩的な立場のハンギョレ・メディアグループ、運営:ハンギョレ経済研究所[HERI])に参加してきた(注1)。

 同フォーラムは、日本、韓国、中国の東アジア3国の企業の新たなる進展や、当該地域の関係性を議論するものだった。対象となる企業とその活動は、かなり広い観点から捉えられていた。いわゆる営利企業も、企業の競争・協力を通じた新しいアジアにおける関係、企業のイノベーション、国際標準化、政府との関係はもちろんのこと、CSR(企業の社会的責任)やISO26000(企業の社会的責任ガイダンス規格)、低炭素社会や気候変動など、狭い意味での企業とその活動からのみでなく、より広く様々な観点から、また国際的な視点から、捉えられ、議論されていた。しかも、社会的企業(Social Enterprises)やシンクタンクなどに関する議論もあり、市民社会の視点も含まれていた。

 会議は、まさに、民間の視点を中心に、社会や世界の潮流を踏まえて、新しい東アジアの流れと関係性を考えようとしていたといえる。

 私は、本フォーラムの主催者でもなく、単に分科会の一報告者としての参加者だったので、本質を見逃している面があるかもしれないが、この会議全体を非常に面白い試みであると思った。多分、このようなフォーラムは、日本がもっと元気があり、閉塞状況が薄かった10年、20年あるいはそれより以前なら、確実に日本で開催されていたものだろう。それが、経済的・国際的に大きな存在感を有する中国ではなく、経済的躍進目覚ましい韓国で開かれたのは、今の東アジアの状況を象徴しているように感じた。

 また、今回の会合で私にとって非常に新鮮だったのは、日本社会で企業の動きとして注目が集まるCSRの動きが、東アジア、特にも環境問題や模倣問題など多くの企業活動において問題の起こりがちな中国でも、すでにはじまっていると知ったことだ。もちろん、韓国や中国の方に「CSRは貴国でどのぐらい広まっているのか」と質問したところ、「まだまだ一般的には知られていない」「参加企業も限定されている」とのことだったが、本フォーラム参加者の数や熱気、それらの活動を支えようとする組織の活動などからすると、今後ますます広まっていくことが確実のように思う。その広がりは、今後の中国や韓国での企業活動のあり方を、変えていくことだろう。

 同時にHERIは、東アジアの3国でのCSR活動を推奨していくために「東アジア30プロジェクト(East Asia 30 project)」を実施。その成果として選ばれたCSRを積極的に推進する東アジアの30社、東アジア3国それぞれのCSRベスト30社、また環境・社会・ガバナンスの3分野における東アジアの30社を選定し、本フォーラムで表彰した(注2)。

 北朝鮮問題や尖閣諸島問題、中国軍拡化など、最近、東アジアでのキナ臭さが増してきている。日本も、沖縄の普天間基地問題などを抱えている。このように、東アジア地域の安全保障や軍事的な問題はますます重要になっているが、そういう時だからこそ、本フォーラムのような別の観点から、東アジアにおける国際関係を、特に民間レベルで分析、考察していくことが非常に重要であると思う。特に、日本は安全保障上で主導的な役割をとることには非常に制約があり、またCSR活動で日本は他の2国に比べてかなり先行していることを考えれば、このような交流活動や会合に積極的に関わることは、日本にとって有効なチャネルとツールになることと思う。

 本フォーラムの社会的企業に関する分科会は満員となり、とても熱気があった、韓国での社会的企業や社会起業への関心が高いことがわかった。これは先の記事「Learn from Korea(韓国から学べ!)」(11月30日付)の内容とも符合する。

 また、私が参加したシンクタンクに関する分科会に関して、日韓中のシンクタンクから現状報告があった。韓国のシンクタンクについては、別の記事「韓国はアジアのシンクタンク大国だ」(12月10日付)に述べたとおりだが、非常に注目されたのは、南開大学周恩来政府管理学院の朱旭峰副教授による中国のシンクタンクに関する報告だった。中国においてもシンクタンクがここ数年で急成長しており、その数が急激に増えている。また、従来、シンクタンクはほとんどが政府系か準政府系のものであったが、近年は、中国でも非政府系のシンクタンク(企業系、大学系、市民非営利系などの研究所)が生まれてきているという。例えば、北京天則経済研究所、北京大軍経済観察センターなどである。これらの非政府シンクタンクは、政府機関の統括下にはあるが、その関係性は非常に弱いという。また、それらのシンクタンクは、多様な資金源をもっているとのことである。

 世界的にみても、中国のような社会主義や共産主義の国には、国家計画をつくるときに研究機関を活用するという土壌と歴史があること、世界の多くの移行経済国(ロシアや東欧など)が民主化する過程でシンクタンクが重要な役割を果たしていることなどを考えれば、民主化が進む中国でも起きるべきことが起きているといえよう。

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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