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「ニュースにだまされるな!」民主党は大丈夫か

朝日ニュースター「ニュースにだまされるな!」×WEBRONZA提携

 朝日ニュースターの人気番組「ニュースにだまされるな!」(朝日ニュースター公式サイト)が、WEBRONZA(ウェブロンザ)スペシャルに登場。毎月第一土曜日に初回放送される2時間ちかい番組が、一挙に文字で、かつウェブで読めます。今回のテーマは「民主党は大丈夫か」(2010年12月4日(土)放送分)。9月の代表選後、尖閣問題や閣僚の失言問題などによって、菅政権と民主党の支持率が急降下しています。中村さん、金子さんが迎えるスタジオに集まった4人のゲストは、菅政権の今後をどのように見たのでしょうか。

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◆「ニュースにだまされるな!」民主党は大丈夫か(初回放送:12月4日(土)22:00~23:55)。司会:中村うさぎ(作家)、金子勝(慶応義塾大学教授)。ゲスト:石田英敬氏(東京大学大学院情報学環教授)、太田昌克氏(共同通信編集委員)、谷口尚子氏(東京工業大学准教授)、早坂氏(社会福祉法人柏松会常務理事、あいうえお順)。

◆次回の番組は、2011年1月1日(土)19時からの新春3時間スペシャルで、テーマは「ナショナリズム」です。ゲストは、大澤真幸氏(社会学者)、萱野稔人氏(津田塾大学准教授)、木村三浩氏(一水会代表)、アーサー・ビナード氏(詩人)、藤本由香里氏(明治大学准教授、あいうえお順)。司会はもちろん、中村うさぎさん(作家)と金子勝さん(慶応大学教授)です。再放送:1日(土)19時00分~、2日(日)21時00分~、3日(月)24時00分~、5日(水)21時~、6日(木)14時00分~。詳しくは番組ホームページへ。「ニュースにだまされるな!」番組公式サイト。

【司会】

 ■中村うさぎ(なかむら・うさぎ) 作家、エッセイスト。1958年生まれ。コピーライターやゲームライターを経て、91年にライトノベル作家としてデビュー。自らの浪費や美容整形を綴ったエッセーなどで著名に。著書に『狂人失格』『女という病』『私という病』『セックス放浪記』など。

 ■金子勝(かねこ・まさる) 慶応義塾大学経済学部教授。1952年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得修了。専門は財政学、制度経済学、地方財政論。著書に『新・反グローバリズム』、共著に『新興衰退国ニッポン』『日本再生の国家戦略を急げ』など。

【ゲスト】

 ■石田英敬(いしだ・ひでたか) 東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授。1953年生まれ。専門は記号学、メディア論、言語態分析。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。パリ第10大学大学院博士課程修了。著書に『現代思想の教科書』『自分と未来のつくり方―情報産業社会を生きる』『記号の知/メディアの知―日常生活批判のためのレッスン』、編著に『知のデジタル・シフト―誰が知を支配するのか?』『アルジャジーラとメディアの壁』、責任編集・共訳書に『ミシェル・フーコー思考集成(全10巻)』『フーコー・コレクション(全6巻+ガイドブック)』など。

 ■太田昌克(おおた・まさかつ) 共同通信編集委員。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。共同通信入社後、外信部、政治部、ワシントン特派員などを経て現職。2006年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。09年には核密約に関する報道で平和・協同ジャーナリスト基金賞を受賞。この間、米メリーランド大学や政策研究大学院大学で米国の核戦略と日本の安全保障を研究。博士(政策研究)。著書に『アトミック・ゴースト』『盟約の闇―「核の傘」と日米同盟』『731面積の系譜―細菌戦部隊と秘蔵のファイル』。

 ■谷口尚子(たにぐち・なおこ) 東京工業大学大学院社会理工学研究科准教授。1970年生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。ミシガン大学・カリフォルニア大学サンディエゴ校訪問研究員、帝京大学、東洋大学などを経て現職。専攻は政治学、とくに政治意識や政治行動分析。著書に『現代日本の投票行動』、主な論文に「中小政党の連立政権参加と有権者の投票行動」「市民参加のジレンマ」など。

 ■早坂聡久(はやさか・としひさ) 社会福祉法人柏松会常務理事、特別養護老人ホーム柏松苑施設長。1969年生まれ。法政大学、文京学院大学専任講師を経て現職。社会福祉士・介護支援専門員。共著に『これで納得!福祉のお金』『障害をもつ人たちの居住環境』、共編著に『相談援助指導・相談援助指導実習』。

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(冒頭テロップ)

もたつく菅政権、世論はもう見限った?/首相のクビ、すげ替えれば展望あり?/知事再選で普天間に一筋の光明?/尖閣問題、「柳腰」の次は「弱腰」?/北朝鮮、反省するまでほったらかし?/マニフェスト回帰で予算大組み換え?/約束通り、年金・医療に新制度導入?/TPPから東アジア共同体に再転換?

♪オープニングミュージック:忌野清志郎「GOD」

うさぎ 金子さん、今年(2010年)最後の番組になってしまいました。

金子 早いですね。あっという間でした。ついこの間、政権交代があった気がします。

うさぎ この1年を振り返って民主党はいかがでしたか?

金子 みんなが政権交代に期待して、鳩山さんへの支持はなくなっても民主党支持には踏みとどまっていましたが、それもはげ落ちつつあって、政治に閉塞感が漂い始めました。自民党は選挙では勝っていますが、さりとて自民党の支持率が上がっているわけではない。政治に対する嫌悪感、「もう誰がやっても同じ」というイライラ感が募っている気がします。いつも権力を叩くのは好きですし、もちろん今回も叩きはしますが、今日は「どうにかしないといけないんじゃないか」という気持ちの方が強いです。

 米国も欧州も経済が危ないので、来年の日本経済が非常に心配です。だんだん悪い兆候が出てきていて、このままだと、だだだーっと落ち込んで行ってしまう。政治がもたなくなってしまうのではないかと心配しています。

うさぎ それに加えて、尖閣の問題など色々な問題もありました。

金子 尖閣問題あり、柳田法務大臣の失言問題あり、仙谷官房長官・馬淵国交相の参院問責決議案可決あり。戦前の二大政党制のような足の引っ張り合い、スキャンダル合戦になっていて、政策の議論がないことに私は苛立っています。

うさぎ 戦前のことはよく知りません(笑い)。

金子 お互い生きてないもんね(笑い)。今日は改めて、政策に強い人をお呼びしています。

うさぎ 民主党をどうしたらいいのか、語り合っていきたいと思います。ゲストの方々をご紹介します。まずは、東京工業大学準教授の谷口尚子さんです。ご専門は政治意識や行動論で、今日は民主党の政治と世論の動きについて語っていただきたいと思います。

谷口 よろしくお願いします。

うさぎ そして社会福祉法人柏松会専務理事で、聖学院大学非常勤講師の早坂聡久さんです。早坂さんには、介護や保育の現場が今どのような状況か、必要な政策は何かについて伺いたいと思います。

早坂 現場の声を伝えたいと思います。

金子 さんざん「改革する」と言って期待を抱かせた分野の一つですからね。

うさぎ 福祉が今後どうなっていくのかは、とても興味のあるところです。早坂さんは最近、共著『これで納得!福祉のお金』(ぎょうせい)を出されました。この本はどんな内容ですか?

早坂 年金が76兆円。医療が34兆円。介護保険が8兆円。毎年これだけの予算が費やされています。一方で、特別養護老人ホームに入ると月12万円、保育園に子どもを預けると最高で月12万円かかります。ともすると福祉は「慈善博愛」で、お金と関係ないところで動いているイメージがありますが、福祉とお金が実は関係が深い、ということを改めて問うことによって、今の福祉の問題、今日のテーマでもある民主党政権を含めた現行政策の問題に踏み込んだ本です。

うさぎ 「これで納得!」というタイトルですから、この本を読んで納得できると思います。確かにお金なくして福祉は成り立たないですよね。

金子 国民共通の福祉に、どこからどれだけのお金を出すのか、考えなくてはならない問題ですね。

うさぎ そして共同通信編集員の太田昌克さんです。大田さんには外交問題を中心にお話を伺います。

太田 緊張していますが、がんばります。

金子 私も太田さんの記事を論壇時評で取り上げたことがありますが、非常に鋭い論調です。よろしくお願いします。

うさぎ そして、東京大学大学院情報学環教授の石田英敬さんです。

石田 よろしくお願いします。

金子 石田さんは、この番組の重鎮です。

うさぎ 石田さんはメディア論がご専門ですが、政治でも経済でも何でも語ってしまう方です。

金子 この番組の「ボランチ」、サッカーでいう「守りの要」ですから(笑い)。

うさぎ ありきたりの解説に飽きた方、不信感を持っている方、納得の2時間です。

(CM)

うさぎ 菅政権の支持率はかなり落ちていますが、現在どうなっているのでしょうか。

金子 各社の報道でも支持率30%を切った世論調査が多い。菅政権は支持率の波がものすごく大きくて、しかも最近は連続して大きく落ちています。

 そうなるとまず問題になるのは、来年度の予算編成ができるのかどうか。できたとしても国会を通るのか。小沢(一郎)氏の証人喚問はどうなるのか。ちょっと考えただけでも、波乱含みの要因がたくさんあります。まずはこの低い支持率でそんな状況に突っ込んでいけるのかが不安要素です。閣僚の問責決議案がどんどん通る状態ですから、予算は参議院を通らないんじゃないでしょうか。

 まずは谷口さんに、この間の政党支持率、菅政権の支持率を見ながら、専門家として状況をどう見ているか、難しいと思いますがお聞きします。

谷口 内閣支持率・政党支持率の推移を示したグラフを見ると分かりますが、支持率はがっくん、がっくんと山あり谷ありの状態で推移しています。

 今年前半、参院選を前にした民主党は「せっかく政権交代したのにこれではもたない、参院選を戦えない」ということで、鳩山氏と小沢氏に表舞台から退いてもらい、菅政権を発足させて支持率を大きく回復させました。しかし、わずか1カ月で支持率が下降に転じており、支持・不支持のサイクルが短いことがわかります。もともと民主党はそれほど強い支持層を持っていないので、高い支持率はそもそも「バブル」です。菅政権への支持が9月に再び回復しているのは、代表選で小沢氏と一騎打ちをして菅首相が勝って、もういちど政権がリーダーシップを獲得したかのような印象を与えた時期です。ところが、またすぐに落ちています。どーんと集めた支持が簡単にどーんと落ちる傾向は、基本的に今後も続くと思います。

うさぎ この1~2カ月は、本当に急落ですね。

谷口 政権にしろ、メディアや専門家にしろ、こうした数字にどこまで右往左往すべきか、あるいは、しなくていいのではないか、という議論はあります。

金子 それにしても、浅草・花やしきのジェットコースターと比べても、あまりにもすごい上下です(笑い)。自民党末期の3つの政権に似ています。

谷口 花やしきのジェットコースターは別の意味でガタガタして怖いですが、民主党の閣僚の失言や不用意な発言がメディアに取り上げられることで、支持がますます落ちてしまう。せっかく事業仕分けなどをしても支持率浮揚の効果がなく、大した問題でもないのに支持率が落ちてしまうので、非常に手詰まり感があります。

金子 政党支持率で見ると、自民党が上がってはいますが、飛躍的に上昇しているわけではない。

谷口 そうですね。支持率は下がってはいないけれど、菅政権の失策で逃げた浮動層をうまくすくい取れているわけでもない。これも問題です。

金子 菅政権は自らの失態で自滅していますが、かといって自民党の政策に期待している様子でもない。

谷口 日本の国民は、非常に合理的に判断していると思います。参院選は終わったばかりですし、総選挙も近くない。自民党に期待したところで、すぐ政権交代してパワーが戻るわけではないので、あきらめて待つしかないと思っていると感じます。

金子 この数字は、菅首相に、しっかりメッセージを送ってくれないと、支持率は回復しないよ、と国民が苛立っている証しなのでしょうか。

谷口 菅首相は、せっかく庶民派・市民目線で出てきた政治家なのに、非常に慎重な政権運営なので、多くの国民は気分が乗れない状態です。

金子 メディア論が専門の石田さんは、このジェットコースター状態をどう受け止めていますか? 

石田 日本の国内だけを考えていてはいけないと思います。世界的な傾向で政治的な波動が大きくなって、各国が同じような状況になりつつあります。例えばオバマ米大統領が大きな期待を背負って昨年就任したばかりなのに、今年の中間選挙では大きく歴史的な敗北に陥りました。先進国の政治は短期間でスイングするようになってきていて、そのこと自体が世界の基本的な問題を表していると思います。

 こうした問題は、1990年代の冷戦後の世界がどういう時代になっているかを考えないと説明できません。私の考えでは2005年ぐらいまでが一つの時代の区切りで、世界の政治を形作っていたと思います。つまり、ネオリベラリズム(新自由主義)、メディア政治、ネオコンサバティズム(新保守主義)の3つがセットで、先進諸国の政治の一つのフォーマットをつくった時代がありました。2000年代後半以降は、それが崩れていく過程にあって、いわゆる国民国家・福祉国家も崩れていく。

金子 失業問題も激しいし、家族も崩壊しています。

石田 国家によってプロテクト(保護)されていた人たちがどんどん流動化して、安定した地位から掃き出されていって、その人たちが次の政治を求めています。しかし、新しい福祉国家をつくりなおそうとするオバマや日本の民主党政権が期待されて政権についても、短い時間ではなかなか結果を出せない。これが苛立ちの原因です。

金子 とくに欧米は、相当厳しい不況のさなかです。

石田 そうした不況に耐えられない人たちがかなりの数で出てきていて、それほど長い間は我慢できない状態です。

金子 国際政治を見ても、米国の威光は世界的に相当後退していますし、EUもかつての盛り上がりとは違って、弱い国々からソブリン・リスク(政府債務が債務不履行になる信用危機)が表面化しています。

石田 極東でも尖閣問題などが起きているように、これまで前提となっていた「米国を中心とした世界」という世界システム自体が後退して書き換わっていくプロセスに移行しているのに、次の新しい世界システムがまだ見えてこない。すると旧列強の先進諸国にとっては国家の自信・威信が低下していくので、国民の間にも自信喪失した気分が広がります。政治も自信喪失する。政治も、メディアという鏡に自分の姿を映して短期的に合わせていこうとしますが、菅首相の表情を見ると分かるように「とても自信なげな政治の姿がメディアに映る」ということになります。

金子 確かに、無理やり笑っているような菅首相の「作り笑い」を見ると気持ち悪い、という意見があります。

石田 気持ち悪い個人の表情の問題というより、政治そのものが自信を失っている。そうなると、ますます短期間の世論調査の動向に左右されることになって、こういう結果になっています。

金子 民主党の代表選後にたくさんあったトラブルは、どのように働いたのでしょうか。例えば、衆参のねじれ、小沢氏の証人喚問、閣僚の失言、普天間、尖閣、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など、次々起きた一連の個々の問題は、菅政権にどのように影を落としたのでしょうか。

谷口 先ほど民主党政権の支持率の上下を見ましたが、支持率の短期的回復は、小沢氏など「敵役」をつくってそれを斬ったことによるもので、政策の実態とは関係の薄いものでした。

金子 それは「抵抗勢力」を叩いた小泉政治と似ていますね。

谷口 まったく似ています。メディアを通じて政治の攻防を国民に見せて、勝って見せて支持を得る。これも石田先生のおっしゃる流れの一つの現れだと思います。

金子 かなり底の浅い「テレビ政治」が依然として続いている。

谷口 せっかく民主党政権や菅首相がやろうとしてきた社会保障政策に本腰を入れる前に、民主党議員の不規則発言や外交の問題が出てきてしまい、社会保障制度の改革が効果的にできない状態になっています。参院選で勝てなかったのは選挙制度の問題などもありますが、参院で与党の勢力が弱まった「ねじれ」状態では、自民党はそうお人好しになってくれなかった。「熟議」や個々の政策の「是々非々」で協力してほしいといっても、谷垣(禎一)さんだってそんなに甘くないので、突っ込めるところは突っ込む。すると、国民生活にとって大事な政策が通らない、という状況に陥っています。

金子 自民党が妨害しているのなら、自民党に対する反発が起きてしかるべきなのに、なぜ起きないのでしょうか。

谷口 政策の問題が国民に分かりにくいという理由もあると思いますが、中井(洽)衆院議員の皇室に対する言動など、分かりやすい問題が起きてしまうと、そちらに関心が向かってしまう。パワーゲームをやっている自民党への支持も上がっていないのは、国民が「国民のための仕事をしていないな」と見ているからです。ですから、自民党も考えた方がいい。

金子 自民党が勝って谷垣首相になっても、同じ結果になるでしょう。

谷口 国民にとって重要な年金、高齢者の医療、税制などの分野で、非常に納得できる政策が実現できれば、民主だけではなく、自民にとってもプラスかもしれません。

金子 太田さんはいかがでしょうか。

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