メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

「ニュースにだまされるな!」民主党は大丈夫か

朝日ニュースター「ニュースにだまされるな!」×WEBRONZA提携

うさぎ 菅政権の支持率はかなり落ちていますが、現在どうなっているのでしょうか。

金子 各社の報道でも支持率30%を切った世論調査が多い。菅政権は支持率の波がものすごく大きくて、しかも最近は連続して大きく落ちています。

 そうなるとまず問題になるのは、来年度の予算編成ができるのかどうか。できたとしても国会を通るのか。小沢(一郎)氏の証人喚問はどうなるのか。ちょっと考えただけでも、波乱含みの要因がたくさんあります。まずはこの低い支持率でそんな状況に突っ込んでいけるのかが不安要素です。閣僚の問責決議案がどんどん通る状態ですから、予算は参議院を通らないんじゃないでしょうか。

 まずは谷口さんに、この間の政党支持率、菅政権の支持率を見ながら、専門家として状況をどう見ているか、難しいと思いますがお聞きします。

谷口 内閣支持率・政党支持率の推移を示したグラフを見ると分かりますが、支持率はがっくん、がっくんと山あり谷ありの状態で推移しています。

拡大

 今年前半、参院選を前にした民主党は「せっかく政権交代したのにこれではもたない、参院選を戦えない」ということで、鳩山氏と小沢氏に表舞台から退いてもらい、菅政権を発足させて支持率を大きく回復させました。しかし、わずか1カ月で支持率が下降に転じており、支持・不支持のサイクルが短いことがわかります。もともと民主党はそれほど強い支持層を持っていないので、高い支持率はそもそも「バブル」です。菅政権への支持が9月に再び回復しているのは、代表選で小沢氏と一騎打ちをして菅首相が勝って、もういちど政権がリーダーシップを獲得したかのような印象を与えた時期です。ところが、またすぐに落ちています。どーんと集めた支持が簡単にどーんと落ちる傾向は、基本的に今後も続くと思います。

うさぎ この1~2カ月は、本当に急落ですね。

谷口 政権にしろ、メディアや専門家にしろ、こうした数字にどこまで右往左往すべきか、あるいは、しなくていいのではないか、という議論はあります。

金子 それにしても、浅草・花やしきのジェットコースターと比べても、あまりにもすごい上下です(笑い)。自民党末期の3つの政権に似ています。

谷口 花やしきのジェットコースターは別の意味でガタガタして怖いですが、民主党の閣僚の失言や不用意な発言がメディアに取り上げられることで、支持がますます落ちてしまう。せっかく事業仕分けなどをしても支持率浮揚の効果がなく、大した問題でもないのに支持率が落ちてしまうので、非常に手詰まり感があります。

金子 政党支持率で見ると、自民党が上がってはいますが、飛躍的に上昇しているわけではない。

谷口 そうですね。支持率は下がってはいないけれど、菅政権の失策で逃げた浮動層をうまくすくい取れているわけでもない。これも問題です。

金子 菅政権は自らの失態で自滅していますが、かといって自民党の政策に期待している様子でもない。

谷口 日本の国民は、非常に合理的に判断していると思います。参院選は終わったばかりですし、総選挙も近くない。自民党に期待したところで、すぐ政権交代してパワーが戻るわけではないので、あきらめて待つしかないと思っていると感じます。

金子 この数字は、菅首相に、しっかりメッセージを送ってくれないと、支持率は回復しないよ、と国民が苛立っている証しなのでしょうか。

谷口 菅首相は、せっかく庶民派・市民目線で出てきた政治家なのに、非常に慎重な政権運営なので、多くの国民は気分が乗れない状態です。

金子 メディア論が専門の石田さんは、このジェットコースター状態をどう受け止めていますか? 

拡大

石田 日本の国内だけを考えていてはいけないと思います。世界的な傾向で政治的な波動が大きくなって、各国が同じような状況になりつつあります。例えばオバマ米大統領が大きな期待を背負って昨年就任したばかりなのに、今年の中間選挙では大きく歴史的な敗北に陥りました。先進国の政治は短期間でスイングするようになってきていて、そのこと自体が世界の基本的な問題を表していると思います。

 こうした問題は、1990年代の冷戦後の世界がどういう時代になっているかを考えないと説明できません。私の考えでは2005年ぐらいまでが一つの時代の区切りで、世界の政治を形作っていたと思います。つまり、ネオリベラリズム(新自由主義)、メディア政治、ネオコンサバティズム(新保守主義)の3つがセットで、先進諸国の政治の一つのフォーマットをつくった時代がありました。2000年代後半以降は、それが崩れていく過程にあって、いわゆる国民国家・福祉国家も崩れていく。

金子 失業問題も激しいし、家族も崩壊しています。

石田 国家によってプロテクト(保護)されていた人たちがどんどん流動化して、安定した地位から掃き出されていって、その人たちが次の政治を求めています。しかし、新しい福祉国家をつくりなおそうとするオバマや日本の民主党政権が期待されて政権についても、短い時間ではなかなか結果を出せない。これが苛立ちの原因です。

金子 とくに欧米は、相当厳しい不況のさなかです。

石田 そうした不況に耐えられない人たちがかなりの数で出てきていて、それほど長い間は我慢できない状態です。

金子 国際政治を見ても、米国の威光は世界的に相当後退していますし、EUもかつての盛り上がりとは違って、弱い国々からソブリン・リスク(政府債務が債務不履行になる信用危機)が表面化しています。

石田 極東でも尖閣問題などが起きているように、これまで前提となっていた「米国を中心とした世界」という世界システム自体が後退して書き換わっていくプロセスに移行しているのに、次の新しい世界システムがまだ見えてこない。すると旧列強の先進諸国にとっては国家の自信・威信が低下していくので、国民の間にも自信喪失した気分が広がります。政治も自信喪失する。政治も、メディアという鏡に自分の姿を映して短期的に合わせていこうとしますが、菅首相の表情を見ると分かるように「とても自信なげな政治の姿がメディアに映る」ということになります。

拡大

金子 確かに、無理やり笑っているような菅首相の「作り笑い」を見ると気持ち悪い、という意見があります。

石田 気持ち悪い個人の表情の問題というより、政治そのものが自信を失っている。そうなると、ますます短期間の世論調査の動向に左右されることになって、こういう結果になっています。

金子 民主党の代表選後にたくさんあったトラブルは、どのように働いたのでしょうか。例えば、衆参のねじれ、小沢氏の証人喚問、閣僚の失言、普天間、尖閣、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など、次々起きた一連の個々の問題は、菅政権にどのように影を落としたのでしょうか。

谷口 先ほど民主党政権の支持率の上下を見ましたが、支持率の短期的回復は、小沢氏など「敵役」をつくってそれを斬ったことによるもので、政策の実態とは関係の薄いものでした。

金子 それは「抵抗勢力」を叩いた小泉政治と似ていますね。

谷口 まったく似ています。メディアを通じて政治の攻防を国民に見せて、勝って見せて支持を得る。これも石田先生のおっしゃる流れの一つの現れだと思います。

金子 かなり底の浅い「テレビ政治」が依然として続いている。

谷口 せっかく民主党政権や菅首相がやろうとしてきた社会保障政策に本腰を入れる前に、民主党議員の不規則発言や外交の問題が出てきてしまい、社会保障制度の改革が効果的にできない状態になっています。参院選で勝てなかったのは選挙制度の問題などもありますが、参院で与党の勢力が弱まった「ねじれ」状態では、自民党はそうお人好しになってくれなかった。「熟議」や個々の政策の「是々非々」で協力してほしいといっても、谷垣(禎一)さんだってそんなに甘くないので、突っ込めるところは突っ込む。すると、国民生活にとって大事な政策が通らない、という状況に陥っています。

金子 自民党が妨害しているのなら、自民党に対する反発が起きてしかるべきなのに、なぜ起きないのでしょうか。

谷口 政策の問題が国民に分かりにくいという理由もあると思いますが、中井(洽)衆院議員の皇室に対する言動など、分かりやすい問題が起きてしまうと、そちらに関心が向かってしまう。パワーゲームをやっている自民党への支持も上がっていないのは、国民が「国民のための仕事をしていないな」と見ているからです。ですから、自民党も考えた方がいい。

金子 自民党が勝って谷垣首相になっても、同じ結果になるでしょう。

谷口 国民にとって重要な年金、高齢者の医療、税制などの分野で、非常に納得できる政策が実現できれば、民主だけではなく、自民にとってもプラスかもしれません。

金子 太田さんはいかがでしょうか。

・・・ログインして読む
(残り:約24630文字/本文:約31919文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。