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菅首相の変身は本物。だが、しかし…

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 菅首相の変身は、先の記事(2010年12月20日付「平成23年度予算に物申す!」)に記したように、本人の覚悟から生まれたものであり、本物だと考えている。

 しかし、本物であっても、菅首相が実現したいことが実現できるかどうか、政権への国民の支持率を好転できるかどうかは、別の問題だ。

 そして、政治においては同じ行動、同じ発言であっても、タイミングによってその意味や効果が全くことなってくる。政権が一番強力なのは、発足当時だ。しかも菅首相の場合、その「発足」時は、鳩山政権から代わったときと、民主党代表選で勝利し内閣改造をおこなった直後のときの2度あったのだ。変身すべきときは、本来であればそのいずれかのときだったはずだ。しかし、菅首相はそうしなかった。それは、対小沢対策だった(2010年7月12日付「遂に55年体制の最終ステージこれから起きること」)のだろうが、菅首相が重要なタイミングを逃したのは事実だ。

 菅政権や民主党に対する支持率は、相変わらず低迷傾向にある。さらに、筆者に聞こえてくる声の多くは、いまだ民主党への期待が全く失われたわけではないが、「民主党には失望した」「民主党には裏切られた」という、期待に応えてくれていないことへの反感から、「民主党には2度と投票しない」という嫌悪感に変わってきているように感じる。いわば、民主党が何をしても信頼感を得られない環境が生まれつつあるといえる。

 確かに、12月以降の菅首相は、沖縄訪問、諫早訴訟の上告断念、小沢前幹事長への強い対応、駐ロシア大使の更迭、税制改革・消費増税への意欲を示すなど、矢継ぎ早の動きをしている。また、失敗に終わったが連立交渉などもしてきている。

 菅首相は、今後も政権維持と政権浮揚のために、あらゆる可能性を試みるだろう。年末に決断したといわれる年明け早々の党人事刷新や内閣改造、さらなる小沢潰し、そして一時は頓挫した連立交渉やパーシャル(部分)連合などの試みもしつづけるだろう。

 しかし、それだけでは、菅政権への国民の支持が大きく好転することはありえない。なぜなら、それらの試みや行動は、55年体制時の自民党が政権を維持するためにしてきたことと大同小異であり、菅政権支持に対する国民の支持への大きな変化を生むことにはならないからだ。国民の間には、「民主党もこれまでの自民党と同じ」という心理的、感情的なサイクルが生まれており、「民主党もこれまでのダメな自民党の政権運営の手法と同じで大差ない」というイメージができはじめている(従来のやり方を踏襲する官僚に依存する限りは、そうなるのも当然である)。たとえ支持回復があるとしても、小沢氏を民主党から放逐できたときに、短期的に支持がやや回復する程度であろう。そのような状況を変えるのは、まさに川の流れを逆流させるぐらいの大きなパワーや変化が必要だ。

 他方、民主党内で、前原元代表(外相)らがポスト菅で動きはじめているという話も一部に出てきているようだが、菅首相を強力に凌駕できる対抗馬は現在いないのも事実だ。また、現在の自民党は、民主党との相対で支持率をいくぶん回復してきているが、従来のイメージを払しょくし、国民の大きな支持を得て、民主党を圧倒しているとはいえない現状がある。菅首相は、もちろん早期の総辞職もありうるが、様々な試みとあらゆる可能性を試しつつ、現在程度の支持率をなんとか下げないようにしながら、意外としぶとく、不安定な低空飛行を続けながら、生き残り続けることになるのではないか。統一地方選でも、勝つことはないが大負けせず、現状が継続することになると予想する。それは、国民にとっては最悪の状態の継続であるが。

 2011年の菅政権は、このようなダッチロール的な状態のなかで、政権の反転を模索しながら、運営されていく。

 その反転のためには、

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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