メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

 ふり返れば2010年は中国に振り回され続けた一年であった。

 尖閣諸島沖の衝突事件とレアアースの輸出制限、ノーベル平和賞をめぐる騒ぎ、そして延坪島砲撃事件で北朝鮮に断固たる措置をとろうとしない不透明な外交姿勢……。

 国際的には「中国異質論」を広げ、日本社会では一時沈静化していた嫌中感情が再び頭をもたげさせる結果につながった。

 尖閣事件の渦中に実施された内閣府の外交世論調査では中国に「親しみを感じない」が77・8%(09年は58・5%)に達し、78年以降では最多となってしまった。

 せっかく増加に向かっていた中国人の日本ツアーに急ブレーキがかかり、日本人の対中観光も同様に減少傾向が見られた。

 とはいえ、こうしたマイナス現象は05年春の小泉首相の靖国神社参拝をきっかけとして起きた「反日デモ」の時がそうだったように、今年前半にも回復する可能性が大といえる。なぜならば日本経済の対中依存度は今後ますます強まる傾向にあるからだ。

 問題は尖閣諸島をめぐって存在していた日中外交当局間の「暗黙の了解」が大きく傷ついてしまったのを、元通りに復元することができるかどうかだ。それは首脳間でいったんは合意された東シナ海のガス田の共同開発の行方にも深く関わっている。

 この「暗黙の了解」とは、尖閣諸島を日本が実効支配する状況下で、両国とも自国民の島への接近・上陸を認めず、無用なトラブルを避けようとの外交当局間の合意である。

 小泉政権時代にも日本側は上陸した中国人・香港人を逮捕したが、それは早期に強制送還するための措置だった。それを今回は日本側が船長を逮捕し、「国内法を粛々と執行する」との対応を示し、実効支配に新たな実績を加えようとした。それは絶対認められないと、中国側が日本側の予測を上回る猛烈な巻き返しに出たのである。

 こうした中国側の強硬な出方を民主党政権の幹部は予測していたかどうか。菅総理や前原、岡田新旧外相らが過去の尖閣諸島をめぐる経緯についての十分な理解があったようには思えない。

 日中間の領土・領海をめぐる問題に根本的な解決の見通しが立たない状況では、いま一度、「暗黙の了解」の再構築をめざすのが次善の策ではないか。領海侵犯する中国漁船は排除する。上陸者があれば逮捕はするが、早期に強制送還する、という基本線への回帰だ。

 だが外交には相手がいる。肝心の中国側は元に戻ろうとするだろうか。

 結論からいえば、 ・・・ログインして読む
(残り:約646文字/本文:約1651文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

加藤千洋

加藤千洋(かとう・ちひろ) 加藤千洋(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)

同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。1972年、朝日新聞入社。大阪本社社会部を経て北京特派員、アジア総局長、中国総局長などを経て外報部長。編集委員。2004年から2008年まで「報道ステーション」(テレビ朝日系)コメンテーター。一連の中国報道で99年度ボーン上田記念国際記者賞。

加藤千洋の記事

もっと見る