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今の政治に必要なのは、21世紀型の政党だ

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 日本の政治における閉塞感は深い。菅政権は、主導権を発揮し打開しようとしているが、現状では難しい。それはなぜか。

 私は、それは、メディアでもあまりとりあげられていないが、今の時代そして今後の時代に対応できている政党がないからだと考えている。1990年代以降、政治主導、官邸主導のために、選挙制度や中央省庁や官邸の仕組みが変えられてきた。それは時代に対応するものであったろう。

 しかし、その変化に対応して、本来であれば政党自体も大きく変わらなければならなった。自民党や民主党による新しい政党づくりの試みがなくはなかった。候補者公募制やマニュフェストの導入などはその表れだったろう。しかし、飽くまでも従来の政党に接ぎ木する形での試みであり、残念ながら政党の本質を大きく変えるものではなかった。それは、自民党も民主党も同様だ。これらの政党は、政党という組織というよりも各議員・各候補者を中心とした、個人集団の集まりに近い。その点では、組織としての政党としては、共産党や公明党の方が確立されていると思う。ただし組織構成員や党員の高齢化や組織の外部へのオープンさの点から考えると、共産・公明両党は必ずしもこれからの政党組織ではないといえるのではないだろうか。

 私は、東京財団勤務の時期における民主党との経験や、自民党が政党シンクタンクをつくるので協力してほしいといわれて2005年から自民党本部での様々な活動や業務をさせてもらったことなどの経験を有するが、それらのことからすると、今の時代、そしてこれからの時代に即した新しい21世紀型の政党が必要であるということを痛感する。

 政権交代とその後の民主党政権の混迷の中で、最近、政界再編の必要性がかなり叫ばれるようになってきている。しかし、単なる現存する政党の離合集散をするだけでは意味がない。政権再編がおこなわれるなかで、ぜひ新しい組織としての政党が生まれてくることを期待したい。いや、そのような組織を生み出せる政党こそが、今後の政治における主導権を握っていけると考えている。

 その新しい政党は、従来の個人の集合体を超えた組織として、次のようないくつかの機能を備えている必要がある。

(1)組織マネジメント機能

 これまでは、政党(自民党と民主党)は、執行部が変わると全く別の組織になってきた。それは、新しい方向性を打ち出すという面では優れているが、組織の一貫性、組織的情報の蓄積、専門性の活用、職員の活用の仕方などでは制約が大きい。また、政党では、議員の役割が大きく、議員がマネジメントの中心になるが、議員であることがマネジメントに優れていることにならない。これらの課題を克服できる、政党マネジメントが確立される必要がある。

(2)マーケティング機能、コミュニケーション機能

 自民党などの政党は、従来、個人の議員・候補者の個人活動に大きく依存して、党員や得票の獲得、業界との関係づくりなどをおこなってきた。それを通じて、有権者の意識や業界動向などを探り、その成果を政策形成の中に取り組むことで、全体としてルースな形で党としての政策に関する情報収集や有権者とのやり取りをしてきた。それは確かに、選挙制度が中選挙区で、社会変化のスピードが比較的緩やかな時には有効だった。しかし、現在のように小選挙区制時代になり、社会の変化のスピードが加速度的に速い場合には、十分ではない。そのような場合は、選挙の時にだけ単発的に有権者の意識判断だけが問題とされがちになり、今までのような形で世論を知るだけでは不十分になっている。

 ここにおいては、政党が組織として、政策のためのマーケティングや有権者との新たなコミュニケーションの手法やチャネルを開発する必要がある。もちろん、各党とも独自の世論調査などを現時点でも活用しているが、その成果を組織的にかつ有機的・継続的に活用していく仕組みづくりが必要だ。この点ではオバマが先の米大統領選で活用したやり方も参考になろう。

(3)人材発掘と育成機能

 小泉政権以来、政権党の代表つまり首相が短期間にころころと変わることが問題視され、選挙(とくに参院選)の回数が多すぎることなどが問題として取り上げられることがある。しかし、この問題は、中選挙区制時代には派閥が人材発掘と育成の機能を果たしてきたが、小選挙区制になったにも関わらず、それに代わる新たな機能や手法が開発できていないことに起因していると考える(詳しくは、昨年7月23日付「世論調査は本当に害毒か?」を参照)。新しい時代に即応した人材発掘とその育成、さらに党の代表・党首を選ぶ仕組みづくりが必要である。

(4)政治教育

 民主主義社会は、より多くの国民、有権者に社会への関心をもってもらわない限りは、社会全体が回っていかない仕組みだ。

 日本は戦後、戦前の反省として政治を国民から遠ざけてきたし、その結果も踏まえて、国民は政治は自分に関係ないもの、遠ざけるべきものと考えてきた。そのため、政治や政策は、国民から見れば単に批判するだけでよく、政治家や行政が勝手におこなうもので、自分が関わるものではないとなってしまった。それが、政治の現状を生むことの一因になっていると思う。

 この現状を変えていく必要がある。そのためには、 ・・・ログインして読む
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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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