鈴木崇弘
2011年01月18日
先日、シンポジウム「大学のアクティブ・ラーニング」に参加した。社会や学生の変化のなかで、世界的な流れは、教育から学習へ、「学習者中心」の教育となってきていて、そのキーをなすのが「アクテティブ・ラーニング」だという。
その「アクティブ・ラーニング」とは、「『能動的な学習』のことで、授業者が一方的に知識伝達をする講義スタイルではなく、課題研究やPBL(project/problem based learning)、ディスカッション、プレゼンテーションなど学生の能動的な学習を取り組んだ授業を総称する用語である」(河合塾『2010年度大学のアクティブ・ラーニング調査報告書』2011年1月)という。
米国のNational Training Laboratoriesがおこなった平均学習定着率の調査によれば、学習形式によって授業から半年後に内容を覚えているかを分類比較したものに関して、つぎのような結果がでている。
講義5%、読書10%、視聴覚20%、デモンストレーション30%、グループ討論50%、自ら体験75%、他者を教えること90%。
このことからも、「受動的な学び」よりも「能動的な学び」の方が、学習定着率が高いことがわかる。
シンポジムでこれらの話を聞いていて、私は、教育のあり方や手法の問題だけでなく、今の日本の民主主義や政治状況について考えてしまった。
日本では、「観客民主主義」といわれるように、国民・有権者は、投票には行くにしても、それ以外の場面では「観客」のように政治を観ているだけで、能動的に参加していない状況があるといわれている。その結果、国民・有権者は、政治や政策が悪いのは、政治(家)や行政のせいだと考え、それらを批判・非難するだけ、要望するだけとなっていることが多い。
しかしながら、民主主義という仕組みでは実は、最終的な責任は国民・有権者にあるのだ。これまで私たち国民一人一人は、政治にはできるだけ関わらずやってきた。その結果が、今の政治状況を生んできているといえる。
これらのことを考えていくと、民主主義の制度と仕組みにおいて、国民・有権者がより的確に政治に関心をもち、必要に関わり、責任をもっていくようにするには、先のアクティブ・ラーニングと同様に、早い時期から政治を知り、様々な形でより参加型で政策形成や政治に関われる仕組みづくりが必要だと思う。その点も踏まえて、つぎのような提案をしたい。
まずは、欧米諸国でもおこなわれている模擬投票(未成年模擬選挙ブログ参照)なども含めた政治教育や有権者教育が、学校教育や学外の非営利活動などの形で必要だ。政党や行政機関などによる子ども向けのHP「キッズ・ページ」や議員の学校訪問による子どもたちが生の政治家に触れ合う機会の提供(1月15日付「今の政治に必要なのは、21世紀型の政党だ」参照)などもこの一環と考えられる。
大学や大学院レベルでは、政策形成に関わる議員や行政・大統領府でのインターンシップやフェローシップなども、若者たちが政治や政策を実際に学び、経験する絶好の機会になる。各政党が若者向けの開かれたグループをつくり、実際の政治を若いうちから体験できるようにすることも必要だろう。現在の政党にも青年部などがあるが、一部の政治好きな若者のためだけのものになっていて、外に開かれているとはいえない。
また、
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