春名幹男
2011年01月24日
ハリウッドのスターも含めて225人もの著名人を集めてホワイトハウスで行われた胡錦濤中国国家主席歓迎の晩餐会。華やかな公式行事の裏で、もう一つの重要なプロジェクトが進行していた。
米中首脳会談の翌20日、ケーン民主党全国委員長は幹部あてに送ったeメールで、大統領再選の選対本部を3月か4月にシカゴでスタートさせると通知した。オバマ大統領は新首席補佐官にビル・デーリー元商務長官を任命したほか、スタッフを大幅に入れ替えた。来年2012年の大統領選挙に向け、オバマ陣営の体制がほぼ固まった。
昨年11月の中間選挙で大敗したオバマ大統領の与党民主党。しかし敗北後、オバマ大統領の政権運営はむしろ好調だ。所得税減税の延長を柱とする追加景気刺激法を成立させ、米ロ新戦略兵器削減条約(START)の批准承認に成功、世論調査の支持率は50%台を回復した。
オバマ政権が最も必要とするのは「実績」だ。大型景気対策法や医療保険改革法を成立させたが、景気はいっこうに良くならず、失業率が9%台に高止まりしていた。
だが年初来、株価が回復基調を取り戻し、失業率もやや低下、ようやく経済も明るい兆しを見せ始めた。
イランの核兵器開発も、ニューヨーク・タイムズ紙によると、イスラエルと協力して秘密裏に行ったサイバー攻撃でウラン濃縮計画を大幅に遅延させることに成功したようだ。
さらに外交、経済などの分野で実績を上げたい、と考えるのは当然だろう。こうした変わり身の早さは、米政治では別に珍しいことではない。クリントン元政権時代、1993年から94年前半まで、米側は日本に市場開放の「数値目標」を日本側に激しく迫ったが、結局は、中間選挙1カ月前に突然妥結させた。
今度の米中首脳会談を、ニューヨーク・タイムズ紙は「新たに協力的な中国」と題する社説で前向きに評価したが、ワシントン・ポスト紙は「オバマ大統領は人権問題で胡錦濤主席を良く見せた」と批判した。
日本の有力紙は「30年先を見据えて、グローバル時代の超大国として信頼を集める関係を築いてほしい」(朝日)、「(米中両国の)一層の信頼関係…が…世界の平和と安定に寄与しよう」(読売)と米中の関係修復を評価したが、日経新聞は「米中主導で世界の新たな秩序作りが進まないよう、(日本は)大国として汗をかく気構えが必要だ」と警戒感を示した。
だが、現実には、オバマ大統領の対中外交は再選戦略の一環であることをまず認識しておく必要がある。
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