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中国の軍用機開発と欧州防衛航空宇宙産業

清谷信一

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 前回2回にわたって中国のステルス戦闘機に関わる話を書いた(1月16日付「中国の『ステルス戦闘機』に過剰反応する必要はない」19日付「次期戦闘機(FX)に「ステルス」は不要だ」)。

 確かに、中国の軍事技術の発展は著しい。これは間違いない。だが、中国は主要技術の多くを外国に頼っているのが現状だ。世界の兵器市場が統合された結果、ロシア崩壊以前であれば「門外不出」だった技術、レーダーや航法装置、赤外線暗視装置などが市場で入手できる。だから既存のコンポーネントを掻き集めてくればそれらしい兵器は開発できる。このような市場の整備は中国の兵器開発の大きな追い風となっている。

 だが、基礎研究や幅広い技術基盤がなければ本当に先端的な装備、例えばステルス戦闘機やAWACS(早期警戒管制機)のようなものは開発できない。その点、中国は大きく遅れている。

拡大ファンボロウ航空ショーに展示されたJF-17。

 重要なことは正しい現状認識とともに、将来における中国の軍事技術動向を正しく予測することだ。

 90年代、中国の軍事技術のソースはソ連が崩壊して金に困っていたロシアだった。現在もロシアは中国に多くの兵器を輸出しており、最大の兵器供給国だ。だがロシア経済は資源バブルもあり何とか持ち直している。焦って先端技術を仮想敵国である中国に売り払う必要はなくなっている。しかも中国側の違法コピーによって、自らの世界市場の侵食を受けつつある。このためロシアは近年、技術を出し渋ってきている。

 例えば中国がパキスタンと共同開発した戦闘機JF-17はロシア製のMig29の半値以下ともいわれており、世界で最も安価なジェット戦闘機の一つだろう。中国はこれをロシアがマーケットとしてきた途上国、特にジンバブエなどアフリカ諸国に売りこんでいる。また、既に中国の練習機兼軽攻撃機であるK-8は途上国に多く輸出されている。

 このようにして、国際兵器市場における中国のプレゼンスは近年とみに増している。筆者は南アフリカ、ケープタウンで隔年開催される兵器・航空見本市、AADを毎回取材している。昨年9月のショーではこれまでにないほど、中国企業の出展が目立った。

拡大AADに出展した中国企業。

 特にこれまで出展のなかった航空機関連の電子コンポーネントや、通信ネットワークなどの展示が目立った。また、軍艦の造船所の出展も初めて行われた。

 かつて中国の輸出兵器といえば比較的プリミティブ(原始的)な小火器や対戦車ミサイルなどが多くかったが、昨今では展示される兵器のレベルが向上しており、ネットワーク・システムまで提案するようになっている。決してあなどることが出来ないレベルにまで軍事産業が発展しているということが言える。特にアフリカや中南米ではその低価格を武器に、ロシアやフランスなどの市場を侵食し始めている。

 だが、一方で先に述べたように先端技術の開発やコアコンポーネントの供給は外国頼みの部分が多いことも事実だ。家電やコンピューターなどと同様、主要コンポーネントを輸入し、安い労賃でそれらを組み立てて製品として輸出している。

 1月16日付「中国の『ステルス戦闘機』に過剰反応する必要はない」で述べたように、中国が最も頼りとしているウクライナは親ロシア政権が誕生しており、今後技術移転が細る可能性が高い。そうしたウクライナ製兵器も、エレクトロニクスの分野では西側諸国に劣っている。

拡大ジンバブエ空軍のK-8。AAD2010で。

 中国が次の軍事技術の供給元として狙っているのがEU(欧州連合)だ。公には天安門事件以来、EUは中国に対して兵器やその生産設備、技術の提供を禁止している。だが、実際は

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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