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政治グッズなう――AKB48との関係性?

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 皆さんは、「政治グッズ」をご存知ですか。これは、ほとんど私の造語に近いことばだが、私は、政治に近いところで活動するようになった5~6年ぐらい前から特に、この「政治グッズ」に関心をもってきている。

 政治グッズとは、具体的に何か。要は、政治や政策に関係する様々な物、商品、製品であり、グッズ化した政治である。実際に政治活動や選挙を応援したり、支援するための実用的な道具もあれば、特定政治家や政治を支持したり、茶化したり、皮肉ったり、パロディー化したりするなど、メッセージ性をこめたものまで多種多様なものが含まれる。

 具体的には、政治家のポスターや選挙で直接使うものは除いても、ミント(注1)やチョコレート・クッキー・せんべいやお饅頭などのお菓子、ラーメンなどの食品、Tシャツ、タオル、人形、携帯ストラップ、シール、バッグ、鉛筆や消しゴム・ポストイットなどの文房具、バッジ、トランプ、おみくじ、書籍、CD/DVD、テープ、VHS、マグカップ・湯のみ、扇子、キャラクター(注2)、マスク、髪留め、ベルト、ネクタイピン、民芸品などなど、数え上げるとキリがない。

 海外でも日本と同様、いろいろな政治グッズが流通していて、米国では「政治グッズ」だけを売っているショップもあるくらい。よくよく考えてみれば、中国の共産党の紅衛兵の手帳だって「政治グッズ」のようなものかもしれない。

 日本では、小泉さんが総理だったころから、キャラクター化された政治グッズが増えたように思う。小泉さん関連の「政治グッズ」はそれまでとは違った売れ行きを示し、収益があがったらしく、自民党はその収益を一部寄付したと聞いている。

 永田町の国会周辺では、議員会館内売店、国会内売店、自民党本部内売店などで、これらのさまざまな「政治グッズ」が販売されている。多くの国会見学者や永田町訪問客などが、お土産や記念として、あるいは話のネタとして、たくさん買い求めている光景をよく目にする。それらの「政治グッズ」の陳列棚の前では、見学者の人だかりができ、「おっ、これか」「こんなものも売ってるの?」というように、話が盛り上がっていることもしばしばだ。

 筆者の個人的な意見だが、永田町界隈での「政治グッズ」の購入者の定番はやはり、歴代首相の湯のみ・マグカップと現役総理の饅頭だろう。

 前者は、歴代の総理の特徴ある似顔絵がキャラクター的に書かれていて、実際に湯飲みとして使えて実用的だし、現代史の勉強にもなり、話のネタにも使える。

 後者の総理饅頭は、中身は普通の饅頭で、総理が変わってもあまり変わり映えしないような気もするが、パッケージには現役総理のキャラクター画が描かれ、総理の特徴や、話題になりそうなストーリーやトピックが印刷されていて、見るだけでも楽しく、政治に興味がなくとも思わず買い求めたくなる。ある種、コピーライトや商品開発の能力が発揮されていると思う。

 ちなみに、菅総理の饅頭は、「KAN一発ッ!珈琲まんじゅう!」と命名されている。「代表選で、大差をつけて一発で通過したから」だそうである。また、「イラ菅」といわれる総理にちなんで、「怒り度MAX イラ菅の菅コーヒーチョコレートクランチ」というものもある。

 こうした「政治グッズ」を長年眺めていて面白いのは、その商品の人気が個人の人気と連動することだ。

 売り上げ面で、小泉総理の「政治グッズ」人気を上回る総理はその後、出ていないという。小泉グッズの売れ行きは、当時の小泉人気を示すネタとして、たびたび報じられもした。他方、民主党が政権を奪取し、政権交代した記念につくられた「政権交代紅白まんじゅう」は、鳩山政権の支持率低下に伴って、売れ行きも低迷したという。

 さて、なぜ筆者は「政治グッズ」にこだわり、関心をもっているのか。

 それは、政治グッズが日本人と政治をつなぐ貴重なツールの一つになる、と考えるためだ。日本では、「私たち一人一人にとって政治は関係ないもの、遠いもの」という意識がまだまだ強い。そのような意識や状況を変えていくときの一つのツールとして、またそれを変えるきっかけとして、「政治グッズ」を活かせるのではないかと考えているからだ。つまり、「政治グッズ」は、政治コミュニケーションのツールとして、私たち一人一人と政治との距離を縮めて、政治参加のきっかけをつくってくれのではないかと思っている。

 これまで、芸能界やスターは、一般庶民からは遠い存在だった。だが、AKB48が日本のトップアイドルになった現在、彼女たちはファンにとって縁遠い存在ではなく、普通の女の子たちのように親しみを感じさせてくれる。それは、育成当初から「親しみやすさ」を念頭にファン「参加」型で育てられた存在だからであり、そのことで圧倒的な支持を広がり、紅白に出場するほどの彼女たちの人気につながった。

 政治にも同じことがいえるのではないかと思う。政治は本来、私たち一人一人の生活の密接にかかわるもの。ただ、これまでは「親しみやすいもの」とは思えなかった。しかし、「政治グッズ」をうまく活かせば、その状況を変えられのではないかと思う。

 AKB48に学ぶべきもう一点は、「参加性」だ。先に記事(1月18日付「『アクティブ・ポリティクス』の勧め」)でも記したように、政治における参加性の確保は、私たち一人一人が政治に関心をもつために、また誰かに政治への関心をもたせるために、非常に大切な要素だ。

 こうした可能性を感じさせる点で、非常に面白い最新の「政治グッズ」を一つ、紹介したい。冒頭で紹介したような日本におけるこれまでの「政治グッズ」は、単に政治に親しみを持たせるためだけのものだったが、このグッズはもう一歩進んで、私たち一人一人に「参加」を促すものだ。

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 それは、「WaSH! Japan(ウォッシュジャパン)」(写真参照、商品紹介は、http://www.kccz.net/をご覧ください)という名称の「覚悟のニッポン洗浄剤(万能クリーナー)」(ウォッシュジャパン推進委員会)だ。副題が、「みんなでニッポンを洗おう」。これは、いま人気絶頂の坂本龍馬の「いま一度、日本を洗濯致し申し候」という言葉にも重なる。この商品の用途としては「しがらみ政治でこびりついた汚れ(ムダ遣い・天下り・利権など)を落とします」と記載されている。 使用方法には、「2009年政権交代で『私たちに任せてもらえばきれいにする』というサービス業者がでてきましたが、任せてみて期待はずれでした。もう人任せにせず、自らの手できれいにしましょう。そうすれば、政治への不満、生活の悩み、将来への不安も払拭されるかもしれません」とも書かれている。

 本当は、実に重いテーマを購入者に問いかけているが、ユーモアがあり、明るくて、親しみがでていて、自分も参加してみたくなる感じだ。これぞ「政治グッズ」の真骨頂といえる。

 この新しい「政治グッズ」の目的は、あくまで「自分たちの手で日本を変えていこう」という意識を高め、その意識に基づく運動につなげていくことだそうだ。また、特定政党や候補の支援を目的にしたものではないという。ただ、この理念を共有すると認められる個人や団体について、そのサイトURLをQRコード化して、ラベル上で勝手に紹介することはありうるそうだ。

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 ビル・クリントン前米大統領が、「GIVING:HOW EACH OF US CAN CHANGE THE WORLD」という本を数年前に出している。その本(日本ではまだ翻訳がでていない)のメッセージは、 ・・・ログインして読む
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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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