後藤謙次
2011年02月08日
風前の灯になってきた菅直人政権。「果たして3月危機を乗り越えることができるのか」。今やそんな話題で永田町はもちきりだ。その背景に「衆参ねじれ」があるのは論を待たない。3月危機の先にも山あり谷あり。おそらく菅首相の政治的体力は通常国会閉幕まで持つのは難しいだろう。
仮に税と社会保障の一体改革の与野党協議の開始など当面の課題を片付けたとしても、それ以上の難関が待ち受けるからだ。1票の格差解消を目指す参院の選挙制度改革だ。東京高裁をはじめ複数の高裁で昨年以降「違憲状態」の判決が相次いだ。このため「今の選挙制度のまま2013年の参院選を実施すれば、選挙無効の最高裁判決が出かねない」という危機感が生まれ、西岡武夫参院議長は「今国会中の制度改革」を明言した。テレビ番組で「国会を延長してもやる」と語り、その決意は揺るがない。
その西岡氏が昨年末に試案をまとめた。「都道府県単位の選挙区選挙と全国単位の比例代表制の廃止」「定数は変えずに242のまま」「全国を9ブロックに分け、ブロックごとの比例代表制に一本化」――というのが骨格だ。
たしかにこの案によれば、現状の5倍前後に達する1票の格差は1・15倍と大幅に縮小する。だが、この案は多くの問題点を含む。中でも地域間格差だ。和歌山県選挙区選出の世耕弘成参院議員は「この案でいくと、和歌山県から参院議員はいなくなる」と強く反発する。関西ブロック(福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)に組み込まれている和歌山は有権者数が他府県に比べて圧倒的に少ない。地域の代表がなくなる弊害にどう答えるのか。また、無所属での立候補ができないという憲法上の疑義が生じる。
もっとも、現行制度で行われた昨年の参院選では、民主党が選挙区の総得票数で自民党を上回ったものの議席数では自民党に大差を付けられたという矛盾がある。
つまり「あちら立てれば、こちら立たず」。
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