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民主党・岡田克也幹事長インタビュー:「野党の声に耳を傾けて、もう少し懐の深い議論をしていきたい」

星浩

星浩 政治ジャーナリスト

 通常国会の論戦が続いている。9日には菅政権誕生後、初の党首討論がひらかれる予定だ。菅政権を民主党側で支える岡田克也幹事長は、予算と関連法案をめぐる与野党の攻防をどう乗り切るつもりなのか。小沢氏の国会招致と党内処分の問題はどうなるか。難局に立ち向かう民主党と菅政権の今後を聞いた。(4日、院内幹事長室で)

拡大写真:柳澤花七絵(4点とも)

 熟議を目指す通常国会がスタートしました。予算委員会などをみると、それなりに議論がかみあっているところもあるように思います。滑り出しをどのようにみていますか。

岡田 若干のでこぼこはありますが、基本的にスムーズに審議が進んでいることはありがたいと思っています。議論の中身も政策論議が中心で、これが予算委員会の本来あるべき姿だと思います。

 自民党のなかには「もっと荒っぽく問い詰めろ」という議論と「そうではない」という議論があるようです。自民、民主ともに手探りでやっている感じがしますが。

岡田 これからどう展開するか分かりませんが、国民が期待しているのはやはり政策論議です。日本は改革待ったなしでせっぱ詰まった状況ですから、真剣な議論が国会で行われないと、政治への関心そのものが失われてしまいます。

◆子どもを持つ家庭に大きな影響が◆

 そうした議論を踏まえて(予算案と予算関連法案の)採決、修正という話になると思いますが、どういう展望を描いていますか。

岡田 私たちはもちろん、いまの政府予算案を最善のものと考えて国会に提出しています。ただ、参院では過半数を持っていないわけですから、野党の声にも耳を傾けて必要な修正を行う用意はあります。ただ、どの部分をどういう風に変えるかというところまでは議論が煮詰まっていないので、そこはこれからですね。特に予算関連法案では「子ども手当」の問題が大きな焦点の一つで、もしこの法案が通らなければ児童手当に戻ってしまいます。しかし、児童手当を支給する準備やデータが地方自治体にないので、6月になっても支給できない事態になりかねません。子ども手当も児童手当も受け取れなければ子どもを持つ家庭が大変な影響を受けますから、そこは知恵を働かせる必要があります。子ども手当の法案も「これしかない」というつもりはないので、野党の皆さんからアドバイスを頂き必要な修正を加えながら、最終的にはぜひ賛成して頂きたいと思っています。

 このままでは、2月か3月初めに衆院で予算案を可決しても参院で否決されます。そこから修正協議を始めるよりは、衆院の段階で修正の議論を始める必要がある気がしますが、日程的にはどのような見通しですか。

岡田 関連法案の可決は、必ずしも予算と同じタイミングである必要はないと思っています。昨年も子ども手当法案は予算の可決後に通りました。ただ、あまり遅れてしまうと、その分だけ法案が通らないリスクが高まりますので、なるべく早く話し合いを始めたいと思っています。自民党には頭から「修正協議に応じるな」と主張される方も多いのですが、他の野党の方も含めて、もう少し懐の深い議論をして頂きたい。もちろん私たちは、子育ては個人や家庭の問題だけではなく、社会全体が支援すべきだと考えて子ども手当を創設したわけですが、表現が非常に難しいのですが、何というか、これは今までの児童手当の延長線上にあると言えなくもないわけですから、もっと大人の議論が可能ではないかと思います。

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 以前、とくに自民党時代には、予算を修正すること自体のハードルが高くて、ある種タブーのように思われていました。しかし、政権交代や「ねじれ」の状況下では「(毎年のように予算の修正があっても)それはそれでいいじゃないか」という議論もあります。今までの政治や国会審議と比べて、今後の対応をどのように考えていますか。

岡田 おっしゃるように「予算は基本的に変えるべきではない」という意見がありますが、それは考えてみればおかしなことです。予算とその関連法は国会が定めるわけですから、政府が案をつくったとしても、それを国会の議論を経て変えるということは当然あってもいいことです。

◆マニフェストと与野党協議のジレンマ◆

 民主党への政権交代から1年5カ月たって、世論の期待が高かった分、失望も大きくなっている面があります。岡田さんも「政権交代後の成果」をことあるごとに強調されていますが、この1年5カ月をどのように総括して、次のステップに活かしていこうと思っていますか。

岡田 私たちはすでにかなり色々なことを成し遂げているのですが、それが十分伝わっていないと思います。また、制度が変わったとしても、それを実感できるようになるには時間がかかります。その点では今後もしっかり伝える努力はしないといけないのですが、実際に政権を運営してみると、私たちが想定していたものと多少のズレが生じているのは事実です。「マニフェストの検証」と申し上げているように、夏にかけてきちんと検証して、状況が変わるなどして当初考えていたことが実現できない部分があるとすれば、「こういう理由でできない」ということをきちんと説明する責任が私たちにはあります。マニフェストを100%実現するのは難しいことですから、できるものとできないものを区別して、できなかったことに対するご批判も含めて、次の総選挙で有権者の皆さんに判断して頂くことになります。

 国会の審議にはジレンマがあって、私たちは野党と協議しながら社会保障の新しい制度を組み立てていきたいと考えているのですが、私たちの主張を強く打ち出すと協議が難しいし、協議を始めるためにハードルを下げると「マニフェストはでたらめだったのか」と言われてしまう。なかなか難しいところです。ただ、社会保障制度は政権がどちらの側にあっても政府が一貫して担うべきものですから、野党の皆さんも国民の生活を守る視点で考えて頂きたいと思います。

 マニフェストの見直しや財源の確保、与謝野氏の入閣など、民主党の政権運営のあり方が変わってきた、という批判もあります。「アナウンスなき政策変更」なのか、それとも基本は変わっていないのか。説明が今ひとつ足りないと思うのですが。

岡田 与謝野さんや柳沢さんがこれから議論に加わったからといって、与謝野さんや柳沢さんの従来の主張がそのまま民主党の主張になるわけではないでしょう。ただ、2人はとても立派な政治家です。よく覚えていますが、私が民主党代表を務めていたときに、与野党の年金など社会保障制度の協議機関(年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議)を国会につくって議論をしたときにも、柳沢さんが自民党側の委員として最も公平に、ときには自らの非も認めながら建設的な提案をされていました。党利党略ではなく「本当に必要なこと」、しっかりした制度をつくるために自分たちの政治生活の最後のエネルギーを注ぎたいというベテランが加われば、議論の厚みが違ってきます。私は非常にありがたいことだと思っていますし、そのへんの事情が国民には見えにくいかもしれませんが、例えば与謝野さんの国会答弁を見れば、次第に国民にも気迫が伝わると思います。

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 消費税の増税や社会保障制度改革については、与謝野さんや柳沢さんを含めて自民党出身者の理解がある反面、民主党の一部議員や支持者の理解度が遅れている気がしますが。

岡田 必ずしもそうは思いません。もちろん、党内にはマニフェストやその財源、制度改革について、やや楽観的にみる傾向がないわけではないと思います。しかし、かつては「消費税を3%アップする」という公約を掲げても民主党を支持した有権者がたくさんおられましたから、きちんと説明すれば分かってもらえると確信しています。

 「平成の開国」も社会保障の改革も、覚悟をもってやらなければならない問題で、その覚悟が国民に伝わることが非常に大事だと思います。菅総理や私たちの「この国を何とかしなければならない」という覚悟がきちんと伝われば、世論にも受け入れてもらえると思っています。

◆国民は永田町の半歩先を行っている◆

 幹事長が民主党の運営責任者ですが、政権交代後の民主党内には、マニフェストの取り扱いなど政策の問題を含めた意見対立、足並みの乱れがありました。昨秋には菅さんと小沢さんが争う代表選もありました。岡田さんが幹事長になって、こうした対立や混乱は改善されていますか。

岡田 だいぶ変わってきたとは思いますが、もう少し時間をかけないといけないと思っています。マニフェストの検証についても、代表選のときの小沢さんのように「必要ない。2009年のマニフェストをとにかくきちんと実行せよ」という主張があります。しかし、代表選の結果はすでに出ています。

 先日、都道府県の全国幹事長会議をひらきましたが、1人を除いてほぼ全員の皆さんから「マニフェストの検証をやるべきだ」「民主党は正直じゃないと思われてはいけない」という圧倒的な声がありました。国会議員も日々接しているはずですが、より有権者に接している方たちは、そうした世論を肌身で感じていますから、次第に(「マニフェストの検証」の必要性が)浸透していくだろうと思っています。

 「TPP」(環太平洋経済連携協定)の交渉入りについても色々な議論があり、私も難しい問題だと思っていますが、世論調査では国民のかなりの部分が積極派です。ある意味、国民の方が永田町の半歩先を行っているのではないでしょうか。

 小沢さんの国会招致問題では、私たちマスコミも「世論調査はおかしい」などと一部で言われていますが、そうはいっても、やはりどのメディアの調査でもかなり多くの人が「小沢さんはもっと説明すべきだ」と見ています。出処進退についても厳しい声が多いようです。ところが小沢さんは「刑事裁判なのだから国会で話す必要はない」と主張されていて、いわば「入り口」のところで議論が止まっています。これをどのように解決し、突破されますか。

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岡田 議院証言法にも「裁判中の証言者は証言拒否ができる」とありますから、裁判にかかわる発言を求めることで裁判が不利になるのであれば、それを無理強いできないことは法律上も明らかです。しかし、裁判に関することについて証言拒否はできても、それ以外のことについては出席して答えないといけない。野党もそう主張していますし、現に裁判以外の問題も報じられているわけですから、自らの判断でしっかり説明して頂くことが必要だと思います。ずいぶん努力してきましたが、その思いが小沢さん側になかなか伝わらず残念です。しかし、今でも小沢さん自身にとって政倫審に出席されることがかなりのプラスになると確信しています。

◆小沢氏の党内処分、説明可能な対応を◆

 政倫審など国会招致の問題と、民主党内部における処分の問題があります。今後どのようにこの問題を取り扱うことになりますか。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

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