小北清人
2011年03月07日
韓国では毎年、11月中旬の木曜日は「緊張に満ちた特別な日」となっている。
日本の「大学入試センター試験」にあたる大学修学能力試験(修能試験)が全国一斉に行われる日、なのである。
日本と同様、韓国でも、大学入試は基本的に1次、2次と2度の試験がある。だが各大学で行われる2次試験は論述や面接が中心で、学力そのものを問うのは全国共通で行われる1次のマークシート式の修能試験だけだ。この修能試験で取った点数をもとに受験生はどの大学を受験するかを決める。大学側は独自に行う2次試験、さらに高校の内申書を総合評価して合否を決めるが、最も重い比重を持つのがこの修能試験だ。
日本と違って、国立・私立を問わず、韓国の受験生の誰もが受けなければならない「運命の1日」、それが修能試験なのだ。
受験生が遅刻しないようにと地下鉄が増便されたり、交通渋滞に巻き込まないため会社の出勤時間が遅らされたりと、この日は受験生が社会の主役。時間に遅れそうになった受験生を、警察の白バイが受験会場まで送り届ける、なんてのも、お馴染みの風物詩となっている。
修能試験を、受験生たちは自分が通う高校とは別の、自宅からなるべく近い高校や中学で受ける。2次はそれぞれが受験申請した各大学で受けることになる。
その試験場には、受験生たちは、携帯電話の持ち込みが禁じられている。デジタルカメラやMP3などあらゆる電子機器を持ち込んではならない。しかも試験会場に入るとき、試験監督官に金属探知機でボディーチェックもされる。持ち込みがバレると1年間、大学受験資格が停止されるのだ。
厳しい措置が取られるようになったのは、2004年11月の修能試験で、携帯電話を使った大々的なネットカンニング事件が起きて以降のことだ。発覚したのは韓国南西部の中心都市・光州。首謀者ら7人が懲役8カ月(執行猶予1年)の有罪判決を受け、24人が家裁送致、成績を「無効」とされた受験生は全国で300人以上にのぼったという。
単独犯行と見られる今回の日本の予備校生のケースと違い、韓国の受験生たちがやったのははるかに組織的で、カネのからんだものだった。
手口はこうだ。
成績優秀な受験生たちが試験中、「正解」だとしたマークシートの数字を携帯メールで受験会場の外にいる仲介者たちに送る。仲介者たちは、
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