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「在日の焼き肉屋のおばちゃん」の25万円が国益を害する?:在日コリアンと日本社会の曖昧方程式

小北清人

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 どうみても滑稽としか思えない。在日韓国人から20万円の政治献金を受け取ったことが発覚、「国益に反する。辞めろ」と追求された前原外相がホントにあっさり辞めてしまった一件である。

 そりゃあ、政治資金規正法(外国人の政治献金禁止)にひっかかる以上、誉められたものではなかろう。だが、地元・京都にいる昔なじみの在日韓国人の「焼き肉屋のおばちゃん」が5年間に計25万円を献金していたからといって、それが「国益に関わる云々」と大騒ぎになり、辞任に発展するほどの重大問題なのだろうか。

 当の前原氏自身は菅首相に、辞任したい理由について、

「外国人からの献金で国民、海外から疑念を持たれたら国益を損なう」

 と説明したそうである。これも解せない。70代の焼き肉屋のおばちゃんが韓国のスパイではないかと疑う向きなんて、どこにあるのだろう(彼女に政治的背景がないのが前提の話だが)。その「焼き肉屋のおばちゃん」がもし仮に、少し前まで韓国籍ではなく、「朝鮮籍」だったとしても、北朝鮮関係の組織がらみの献金なら、記録に残る形でカネは出さなかったに違いない。

 むしろ、少し前に表面化した「その筋との関係」も噂される脱税企業からの献金問題などなど、つつかれたくない本当にヤバい問題が別にあり、それが辞任の真の理由ではないかと思いたくなる。

 例えばの話、もし外相である前原氏が朝鮮労働党から日朝関係のための工作資金を京都あたりでウラで受け取っていたというなら、よほど「国益を害する問題」に値しただろう。

 「国益を損なう」なんてカッコいい彼の言葉は、要は体のいい逃げ口上に過ぎなかったのではないか、ということだ。

 それにしても、もしその「焼き肉屋のおばちゃん」が在日韓国人でなければ、こうなることはなかったろう。在日韓国・朝鮮人の多くはいわゆる「通名」(日本名)を使って商売や事業をしているからだ。韓国籍、朝鮮籍を問わず多くの人がそうである。

 筆者は朝鮮半島関係のことを書くことが多いので、何人もの在日韓国・朝鮮人の知り合いがいる。特に北朝鮮がらみの取材では北の事情に詳しい関係者と会ったりもする。それこそいろんな人がいるが、相手はいつも朝鮮名を名乗るし、こちらも先方の名前をそのように認識している。

 だが、そんな在日の友人が商売や事業をしている場合、彼の名刺には金さんや李さんや朴さんでなく「通名」として使っている日本名が書かれている。名刺だけならまだしも、面談中に不意に彼の携帯電話が鳴って、「●●です」とこっちが聞いたこともない日本名を名乗って話しているのを目にすると、最初はギョッとしたのを思い出す。

 ことほどさように、在日の人たちの多くは日本社会に溶けて生活している。外国人でありながら外国人らしくなく、二世、三世と世代を経るごとに、ネイテイブな言語は日本語となり、「日本人ぽく」なっていく。それでも日本国籍を取らずに韓国籍、もしくは朝鮮籍を維持する「特別永住者」がいまも約40万人住んでいるのだ(北朝鮮による日本人拉致事件を金正日総書記が認めて以来、国籍を「朝鮮」から「韓国」に変える人が急増し、「朝鮮籍」はいま3~4万人ほどという)。戦前に日本が朝鮮半島や台湾を植民地にした歴史がその背景にはある。

 日本人と外国人の間に立っているような、「曖昧な外国人」。そのような存在が、在日コリアンであるようにも思える。

 そうなると、

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筆者

小北清人

小北清人(こきた・きよひと) 朝日新聞湘南支局長

朝日新聞入社後、大阪社会部、AERA編集部などを経て現在、朝日新聞湘南支局長。92~93年、韓国に語学留学。97年、韓国統一省傘下の研究機関で客員研究員。朝鮮半島での取材歴多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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