春名幹男
2011年03月16日
沖縄県民に対する「暴言」を暴露されたケビン・メア前米国務省日本部長をさっさと更迭し、ラスト・デミング元駐日公使を起用した米政府。
鮮やかな「政治主導」の人事だった。
他方、デミング氏は68歳でいったんリタイアしていた人物だ。日本部長のほか、国務次官補代理、チュニジア大使を歴任して引退、大学の非常勤教授をしていた。
そんなベテランを呼び戻した。オーソドックスな外交官で、傷ついた日米同盟建て直しにはうってつけの人事に違いない。
メア氏は報道内容を否定していたが、米政府はうむを言わせず、切って捨てた。実は、メア氏は今年6月に定期異動の予定だった。
この人事の理由は少なくとも2つある。
第1に、米外交官が絶対に言ってはならない本音を口にしたことだ。確かに「沖縄の人々は東京に対する『ごまかし』と『ゆすり』の名人だ」という発言もその類に入る。
メア氏は私の旧友で、彼が沖縄総領事に赴任する際、ランチを共にした。普天間基地移転について日米は細かな行程表で合意しており、最初の「普天間返還」合意から15年経て、なお実行できなかったことにいら立ちを感じていたに違いない。
しかし、この発言以上に以上に問題が大きいと思われるのは、日本が憲法9条を変え、自主的な防衛力を増強すれば、米国は在日米軍基地を「米国の国益を促進するために使えなくなる」と発言したと伝えられることだ。つまり、米国は世界戦略の一環として、日本に基地を置いているという意味である。
沖縄県民を怒らせ、問題の解決が長引くと、メア氏の発言内容を逐一精査される恐れがあった。そうなると「在日米軍基地は国益」という米国の本音が問題にさらされる。鳩山由紀夫前首相の「抑止力発言」でも問題になったが、米国は在日米軍基地の日本防衛任務を前面に押し出し、米国の戦略的意図を隠してきた。だが、本音は「米国の国益」だったということになれば、日本側から、普天間基地移設は米国の責任で、と言われかねない。対日外交上、大きいハンディを負う可能性があったのだ。
第2点は、
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