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東日本関東大震災におけるもう一つ大切なこと

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 このたびの東日本関東大震災で犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また被災された皆様、そのご家族の方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。 

 今回の大震災の状況は日々刻々変化しており、筆者は甚大被害地をいまだ訪れてもいないので、現地の震災の詳細について記事をかける立場にはない。また、今回の大惨事における政府対応に関しても、多くの考えや意見はあるが、現時点では詳しく言及したいとは思わない。

 ただこういう事態が大きく変わり、変動しているときであるからこそ、伝えておきたいことがある。

 今回の震災に関しては、一般的に考えると、「被害(震災・津波)」、「原子力発電所(原発)対応」、「復興(むしろ新興に近い)(注)」の3つの側面があると思う。

 だが、筆者は、もう一つの重要な側面があるのではないかと考えている。それは、ほとんどまだ社会的にはいわれていないが、「社会知見・情報蓄積(日本社会そして国際社会への時間を超えた社会的・国際的知見の蓄積)」という側面である。

 今回の大震災は、1896年の明治三陸地震以上の規模で百年に一度とか、千年に一度とかの大震災といわれる。マグニチュードでも、チリ地震が9.5で最大だが、今回の大地震は9.0で、スマトラ島沖地震、アラスカ地震に次ぐ規模で、世界最大級(もちろん日本での観測史上最大)の地震である。

 その被害は、95年阪神淡路大震災の死者数を超え、損害総額でも、同様に阪神淡路大震災の約10兆円をはるかに超え、東日本大震災によるインフラや生産設備などへの直接的な被害だけで15兆円を超えるとの予想がでている。これは、今後日本の産業構造、財政状況、金融構造を大きく変えていくであろうことが考えられる。また、今回の震災は、日本の政治状況を一変させ、現政権や政治ガバナンスの問題点をさらに鮮明にしてきている。

 しかも、今回は津波と原発の問題が複雑に絡んでいる。特に、原発問題は、国際的にメディアおよび国際社会からの注目が高い。たとえばドイツは、今回の福島第一原発事故を受けて、原発の一部を一時停止、原発政策の見直しを開始した。

 つまり、9・11(2001年の同時多発テロ事件を意味する)が、米国を変え、世界を変えたといわれているが、今回の震災つまり3・11が、日本を変え、世界を変えようとしているのだ。

 このように考えていくと、次のことがいえるのではないかと思う。今回の震災そのもの、そこでおこなわれた救済・救援と対応、原発危機と対応、東電のような公益事業体の動き、被災地の復興・その周辺を含めた地域ガバナンス・産業構造の再構成、日本全体の対応と復興さらに日本社会の新興、地域づくりやまちづくり、そしてそこにおける住民、政治や官邸および行政を中心とした国家のガバナンスの対応と構築、メディアの対応とあり方、国民・市民の対応、海外とメディアとの関係、海外からの救援や在留外国人などを含めた国際関係、震災関連の資金の流れ・治安・教育などなど論点を挙げるときりがないが、その成功と失敗すべてが、これからの日本そして海外における社会・地域づくり、国と地域のガバナンス、社会とエネルギーとの関係性、国家間関係さまざまな分野や側面での重要な知見となり、資産となるのだ。その意味で、日本社会と日本人は、現在、そしてこれから起きてくる今回の震災関係の情報を集積、調査、整理、分析しまとめておく必要がある。そして、それを最低限でも、英文にまとめ、海外に発信するのだ。それは、私たち日本人の社会、世界そして歴史に対する貢献にもなるし、また人類全体に対する責務であると思う。

 筆者は、船橋洋一さん(前朝日新聞主筆)から、以前に次のようなことを教えてもらったことがある。

 「関東大震災後、後藤新平が、海外からの援助も含めた震災にかかわることを調査し報告書にまとめた。その後書きには、その作業のために資金などを拠出した方々への謝辞も掲載されていた。英文でも出版した。菊のご紋章入りの分厚い本。私自身大切に持っている」

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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