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自衛隊の化学戦部隊は、夏の暑さに対応できない

清谷信一

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 自衛隊の化学戦専門部隊にも問題がある。筆者は過去自衛隊のNBCR(Nuclear, Biological and Chemical、Radioactivity)専門部隊の指揮官や化学学校の元校長などと何度も話をする機会があったが、彼らはNBCRの状況は自分だけで対応するような意識が強く、普通科や他の兵科と連携して大規模放射能災害に対処するシナリオを想定しているとは思えない。

 前回述べたように原発の暴走やダーティボムの問題が発生した場合、状況の偵察、避難民の輸送などで、ヘリ部隊や普通科や施設科など諸兵科の助けが必要だ。だが自衛隊のNBCR関係者にその意識が薄い。

 中央即応集団の大臣直轄の中央特殊武器防護隊や、各師団や旅団に配備されている小規模な化学科の部隊だけでは大規模な作戦を行うことは不可能だ。

 化学車輛でなくともNBC防護システムを搭載した兵員輸送用の装甲車などであれば、隊員は安全に汚染地域に進出し、装甲車内に避難民を収容できる(避難民をフォールアウト=放射性物質の降下から守ることができ、被爆を最小限に抑えられる)。これらは車内を加圧し、フィルターを通して換気を行うことでフォールアウトから乗員を守るようになっている。

拡大陸上自衛隊の軽装甲機動車=筆者提供
 だが陸自の装甲兵員輸送車でも数の上で最も多い軽装甲機動車はNBC防護システムが装備されていない(しかも4人乗りでサイズも小さい。避難民を乗せて移動させるには小さすぎる。世界で兵員輸送車にこんな使い勝手の悪い小さな装甲車を使っているのは自衛隊だけだ)。
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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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