2011年04月22日
韓国に大学は数多あれど、理工系ではソウル大学をしのぐスーパーエリート大学として知られているのが「KAIST」(カイスト)である。
KAIST。正式名称は「韓国科学技術院」という。日本ではとんと馴染みが薄いが、韓国中部の大田市に本部がある科学技術に特化した国立エリート大学だ。
そのKAISTがいま、揺れに揺れている。
1月28日(1年生)、3月20日(2年生)、3月29日(4年生)、4月7日(2年生)と今年に入り4人の学生が相次いで自殺した。それをきっかけに、学内外から、「成績至上主義に走る現総長のやり方がこのような悲劇を招いた」と不満が噴き出し、徐(ソ)ナムピョ総長の辞任要求まで出始めたのだ。
KAISTというのは、韓国ではもちろん、自由主義諸国の中でも実にユニークな大学である。学生の授業料はすべて国が負担する、つまり授業料が全額タダなのだ。ほとんどの学生は寄宿舎生活を送るが、その費用も実質的にタダ。タダづくめの環境の中で学生たちはひたすら専門分野の勉強に邁進する。
KAISTは1971年、「科学立国」を目指す朴正熙政権のもとで発足した理工系大学院の韓国科学院がその前身にあたる。北朝鮮と熾烈な体制競争を繰り広げる中、経済発展と貿易促進を成し遂げるには自前の技術力と「優れた頭脳の人材育成」が不可欠と朴大統領は考えた。そのため学生の授業料はもちろん、兵役も免除された。
全斗煥大統領時代の84年に4年制の学部課程が作られ、いまのKAISTに至るが、授業料免除は新設の学部生にも適用された。Ph.Dコースに進む学生には兵役が免除されるか短縮されるようになっているという。
文字通り、「国策実現のためのスーパーエリート大学」なのである。
そのスーパーエリート大学に波乱が起き始めたのは2006年7月。いま論議の的の徐総長の就任からだ。徐氏は米マサチューセッツ工科大学(MIT)の元教授。高校生のときに米国に移民、米社会にすっかり根を下ろし、36年間、MITで教壇に立ってきた人物である。
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