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DSソフトで防災教育――72時間をどう切り抜けるか

谷田邦一

谷田邦一 ジャーナリスト、シンクタンク研究員

 大災害時の人の生存率は、72時間を過ぎると急速に低下する。東日本大震災でも、この持ち時間を目安に大がかりな捜索救助が集中的に行われた。阪神大震災では、救出された生存者のうち、9割強が72時間以内に助け出された人々という。脱水症状や長時間の身体圧迫などが生存限界をもたらすためだが、国や自治体の救援活動が本格化するにも、このくらいの時間がかかってしまうのが通例だ。

 ところが、よく知られた事実ではあるものの、いざという時に、この限られた時間をどう切り抜ければいいのかとなると、大人でも自信をもって語れる人々はそう多くはない。なぜなのだろう。学校や職場での防災教育や訓練が、おざなりになっているのではないかと指摘する専門家は少なくない。

 そこで、とかく「退屈だ」といわれがちな防災教育ツールを、子どもたちが興味をもって身につけられるよう、ゲームソフトの形で開発した専門家集団がいる。慶応大学で防災について学んだ同窓5人が経営する防災コンサルタント「イオタ」(東京都中央区)だ。いわゆる研究室から生まれたベンチャー企業である。

小中学生向けDSソフトの設問の一部
 都市防災などが専門で、政府や自治体の防災審議会委員を歴任する梶秀樹・東京工業大特任教授が、慶大で教鞭をとっていたときの教え子たちの発意で、「梶先生の教えを受け継ぎたい」と4年前に株式会社として立ち上げた。梶氏は、大規模地震にからむ各種のシミュレーション技術開発の草分け的存在でもある。社名は、研究室があった湘南キャンパスの建物名からとったという。
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