小谷哲男
2011年04月29日
去る3月5日、商船三井が運航するタンカー「グアナバラ」号(バハマ船籍)が、オマーン沖のアラビア海を航行している最中に海賊の襲撃を受けた。海賊たちは小型ボートで接近して同船に乗り込み、船長室に向けて自動小銃を発射、操舵室に進入して舵を握った。その後、同船は救難信号を受けたアメリカ海軍によって救助され、4人の容疑者が海上保安庁に引き渡された。24人の船員はすべて外国人でけがはなく、海上保安庁は海賊処罰対処法の海賊目的侵入・損壊容疑で容疑者を逮捕し、3月13日に身柄を日本に移した。
海賊処罰対処法での立件は初めてである。この事案は日本から1万キロも離れた海域で発生し、加害者も被害者も外国人である。4人の海賊はいずれもソマリ語を話すが、内戦状態が続くソマリアでは身元を示す書類はなく、国籍不詳、生年月日不詳、職業不詳のまま立件された。1人が未成年の可能性があるとされたのは、話のつじつまが合わないという理由である。氏名は音を拾ったもので、綴りは不明である。どれが名字でどれが名前なのかさえわからない。以上のように、この事例は何もかもが異例づくしであるが、これを国民から選ばれた裁判員が審理することになるのである。
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