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「水葬」で米中東外交に逆風も

春名幹男

春名幹男 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

 亡き父がイスラム教徒で、同教徒に多い「フセイン」をミドルネームに持つバラク・オバマ米大統領。大統領に就任した2009年には、エジプトの首都カイロで、イスラム世界との「疑念と不和の連鎖を断ち切ろう」と和解を訴える演説をした。

ホワイトハウスで1日、ビンラディン容疑者の死亡について声明を読み上げるオバマ米大統領=AP
 そして、オバマ政権は約10年間にわたって捜索してきた、米中枢同時多発テロの首謀者オサマ・ビンラディン容疑者(54)を発見、殺害した。

 しかし、これで米国とイスラム世界の新しい時代が到来する、とは予測できない。むしろ「疑念」の溝は広がりそうな気配だ。

 問題は殺害と葬祭の方法にある。

 米海軍特殊部隊SEALSは2機のヘリコプターで、パキスタンの主権を無視して、パキスタンの首都イスラマバード北郊アボッタバードにあるビンラディンの隠れ家を急襲、武器を持っていなかったが、殺害した。「生け捕り」にすれば、奪還闘争を誘発する恐れがあるため、殺害した可能性がある。

 ビンラディンは米連邦捜査局(FBI)の指名手配を受けていたが、裁判で弁明の機会も与えられなかった。だが、ビンラディンは元々、自分から先に米国に対して「宣戦布告」した。恐らくイスラム社会では、殺害の状況はともかく、テロに対する米国の報復、と殺害自体を大問題にすることはないかもしれない。

 むしろ問題は弔い方である。

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