川村陶子
2011年05月13日
震災のショックが日本を覆っていた3月半ば過ぎ、ドイツでは、ヴェスターヴェレ外相が「戦後ドイツ外交最大の失敗」を非難するメディアの攻撃にさらされていた。その失敗とは、リビア上空に飛行禁止区域を定め、文民保護のために必要なあらゆる措置を容認する国連安全保障理事会決議1973に対して、安保理非常任理事国のドイツ代表が棄権票を投じたことである。
西ドイツ建国以来、ドイツは米国を中心とする西側同盟の結束を重視すること、突出行動で西ヨーロッパ近隣諸国を刺激しないことを、外交・安全保障の絶対原則としてきた。しかし、今回の安保理決議1973については、英仏が先導する決議案に米国が賛成したのを尻目に棄権へと回った。
ヴェスターヴェレ外相が当時党首を務めていた自由民主党(FDP)は選挙戦で劣勢が伝えられており、外国への軍隊派遣に消極的な有権者の心情を汲んで棄権を選んだというのである(ちなみに実際の選挙では原子力政策が中心的争点となり、原発の早期廃止に消極的なFDPは惨敗、ヴェスターヴェレは党首退任を余儀なくされた)。
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