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サムスンに李明博政権が牙を剥いた理由(下)

小北清人

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 政権の「親財閥路線」が変わりだしたのは2010年夏からだ。その年6月の統一地方選で、与党ハンナラ党は北朝鮮による哨戒艦爆沈事件など安保問題を全面に掲げて選挙戦を行い、世論調査でも圧勝が予想されたが、まさかの惨敗を喫した。

「いい目をみているのは財閥企業だけで、下請け企業や一般の国民の生活はむしろ悪くなるばかりだ」

 多くの有権者が格差社会の広がりと、利益を伸ばし続ける財閥企業に怒りを募らせ、財閥寄りの姿勢を見せる政権与党への不満を爆発させたとみられている。

 予想外の敗北を受け、政権は新たなスローガンに「公正社会」を掲げ、「財閥の社会的責任と貢献」に言及しはじめた。

 財閥企業と中小企業の共存を目指すという「同伴成長委員会」が政権の肝いりで作られ、この4月初めには政府の強い圧力でSKグループなどがガソリン価格を引き下げた。政府は携帯電話料や生活用品の価格引き下げを大手企業に迫る構えも見せている。

 4月26日には李大統領の側近が討論会のなかで、

「国民年金機構は持ち株を通じて大企業の方針に関与しなければならない。国民年金機構はサムスン電子の株を5%持っている。これは李健熙会長個人の持ち株より多い。だが現状では年金機構がサムスン電子経営陣に対する牽制と経営透明化を求める努力をきちんとやっているかは疑問だ」

 と発言、圧迫姿勢をさらに強めた。

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