薬師寺克行(やくしじ・かつゆき) 東洋大学社会学部教授
東洋大学社会学部教授。1955年生まれ。朝日新聞論説委員、月刊誌『論座』編集長、政治エディターなどを務め、現職。著書に『証言 民主党政権』(講談社)、『外務省』(岩波新書)、『公明党』(中公新書)。編著に、『村山富市回顧録』(岩波書店)、「90年代の証言」シリーズの『岡本行夫』『菅直人』『宮沢喜一』『小沢一郎』(以上、朝日新聞出版)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
薬師寺克行
4月21日、菅首相はオーストラリアのギラード首相と会談した。焦点の一つが日豪経済連携協定(EPA)交渉だった。経済産業省や外務省など自由貿易促進派は、首脳会談で日豪EPA交渉の大筋合意を目指していた。この合意を梃子に、アメリカなど9カ国が進めている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加に弾みをつけようとしていた。
ところが震災を受けて、農水省が猛反撃に出た。首脳会談前の調整で「二国間のEPA交渉を促進するという政府の基本方針は撤回すべきだ」「被災者のことを考えれば農業の市場開放などもってのほか」などと主張し、一切の譲歩を拒否すべきだと主張した。菅首相をはじめ政権中枢は震災対策に追われており、推進派の後押しができないまま会談本番を迎えた。豪州政府は大筋合意が無理だとしても、合意に向けたスケジュールをはっきりさせたいと要求したが、国内の足並みの乱れを受けて菅首相は踏み込んだ発言はせず、結局、「妥結に向けてさらに交渉を行うことを確認した」にとどまった。
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